マイニングで地域コミュニティーの活性化を狙え。NICT研究の中身

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ビットコインを始めとした仮想通貨でおなじみのブロックチェーン(分散型台帳)技術。ネットワーク参加者は競い合いながらパズルを解くための“計算”を実行し、誰かがパズルを解いた時点でネットワーク内の未保存の取引履歴が保存される、というのが一般的なブロックチェーンの仕組みだ。

パズルを解けた者には見返りとして報酬が与えられる。その作業はまさに鉱山から金を採掘することを模して“マイニング”とも呼ばれている。過去の取引履歴を改ざんするには、他の全参加者以上のタスク処理速度が必要となるため、実質改ざんが不可能となる。つまり“計算”という、困難なタスクを利用することでデータベースを堅牢(けんろう)にしているわけだ。

我々ソーシャルICTシステム研究室は、このブロックチェーン技術を地域コミュニティーにおける活動履歴の管理に応用する研究開発を進めている。しかし高度な計算によるマイニングは大量の電力を必要とし、現に環境問題への影響が危惧されていることも鑑みると代替方法があった方が良いと考える。

そこで、我々は社会活動そのものをマイニングのタスクとして応用することに着目した。例えば、当研究室では過去に社会福祉に携わる方々と協力し、高齢者宅への電子回覧板配信サービスを検討してきた。本サービスでは、対象家屋付近まで立ち寄り、Wi―Fiなどの近距離無線通信を用いて電子回覧板を伝送するというタスクが発生する。

まさに実行するには労力がかかるという特性は、ブロックチェーンにおけるマイニングのそれと同じであり、マイニングの代替手段として活用できるのではないかと考える。さらに、こういった社会活動は地域コミュニティーにも貢献するため、ブロックチェーンの堅牢化とコミュニティーの活性化の両方を達成する好循環を産むものである。

一部の基本性能に関わる机上検討は完了しているが、基幹システム設計や要素技術の開発など今後取り組むべき課題はまだまだある。

本技術は地域の課題解決に貢献するものとして期待される。

総合テストベッド研究開発推進センター・ソーシャルICTシステム研究室 テニュアトラック研究員 渡辺良人

2016年横浜国立大学博士課程修了、同年に入所。無線通信、マルチメディア信号処理、機械学習、ブロックチェーンなどを融合活用した研究に従事。博士(工学)。

日刊工業新聞2021年7月6日

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