半導体人材の争奪戦が過熱。エンジニア求人は前年比2倍に
半導体業界で人材の争奪戦が過熱している。リクルートの調査によると、エンジニアの半導体関連求人は2021年4―6月期で前年同期比2倍。年間比較では21年1―6月の半年間で、19年実績とほぼ同水準となった。産業界全体で半導体不足の影響が深刻となる中、その半導体業界では慢性的な人材不足の下、未経験の転職者の採用・育成を含め、人材確保に注力している。(編集委員・大友裕登)
「新型コロナウイルスの感染拡大で一時的に求人が減少したこともあって、今年に入って急激に求人が戻ってきている。かつ半導体のニーズが非常に強くなっている」。半導体業界の動向に詳しいリクルートコンサルタントの井上和真氏は、前年同期比2倍となった直近の求人増の背景についてこう説明する。職種では「一番増えているのは開発系。(半導体製造装置や材料など)全般的に多い。次いで、フィールドエンジニアなどサポート側が目立つ」という。一方で、半導体不足の影響については「短期的な需給ギャップは(採用で)大きな影響はない」としている。
半導体業界での求人は、この数年増え続けている。井上氏は「16年春ごろから増え始めている」と話す。
かつての事業再編・リストラが一段落し、安倍晋三前政権による成長戦略「アベノミクス」で景気回復が進み、デバイスメーカーが大型投資に踏み切った辺りから本格的な中途採用が始まったという。
この需要過多の状況は、先の再編・リストラの“後遺症”が色濃く影響している。人員整理に伴い採用を絞った結果、半導体エンジニアの採用・育成が進まなかった。攻勢に転じた最近では、即戦力を採用したくても採れない。井上氏は「時間をかけて人材を育てていかないといけないというのが2―3年の強いトレンド」という。
リクルートがまとめたレポート「転職市場の動向」の中でも、半導体では「エンジニア関連職種のニーズは総じて高く、一部企業では昨年はなかった第二新卒採用にも乗り出した」と報告しているように、若手の確保を積極化。成長の源泉となる人材の確保を急いでいる。