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定年退職はなし。三谷産業が無期限の継続雇用制度を制定した理由

三谷産業は4月から新たに無期限の継続雇用制度を制定し、定年退職を事実上廃止した。人生の節目となる60歳を機会に従業員自身の今後の生き方、働き方を見直し、最適なワークライフバランスの構築を支援する。あわせて会社の新陳代謝を図るため、後進に道を譲る原則60歳での「役職定年制」を導入。従業員がより長く活躍できる職場づくりを目指す。

従来、国内グループ企業を含めて60歳以上の全社員対象に、定年退職後はグループ会社のアドニス(金沢市)に転籍し、65歳まで嘱託社員契約を結んでいた。新制度は「改正高年齢者雇用安定法」よりも幅広い設計とし転籍後、65歳までは「マスター正社員」として個別雇用契約をし、66歳となる年度以降「マスター嘱託社員」として1年ごとに契約更新していく。

また、本人の希望や面談を通じて、グループ全社の中で転属を可能とし、最適な働き場所を提供する。特に給与面では65歳までは昇給を設け、賞与も退職するまで働き方に見合った成果に応じて支給する。退職金制度も継続雇用後、新たに設定される。加えて、社内外講師や技術指導などを時給換算し、報酬として加える出来高払いオプションという制度も追加。これまで培った知見や成功体験を後進の指導や育成に生かす。

佐藤正裕執行役員人事本部長は「社内アンケートで、定年後の労働意欲が高いことを把握している。会社としても、働けるうちは職場を提供し、仕事内容を評価することで意欲維持や利益貢献に努めてもらう」と引き続き戦力として求める。

佐藤執行役員は「スタートして約2カ月。細部は制度を走らせながら詰めていく」とし、2021年度内には副業制度導入も視野に入れる。今後、制度適用者の事例蓄積がグループ全社の理想である“終身雇用”を形作るか注目される。

日刊工業新聞2021年6月15日

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