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JFEスチール、現場リーダーに任期制を設けた新人事制度の狙い

JFEスチールは4月からの新人事制度で、生産現場のリーダーの職能と役職の基準を見直した。年功序列的な考えから、若手のモチベーション(動機付け)を意識する能力主義にシフトした。技能系やスタッフ系の評価基準も改め、個人能力と組織への貢献度を明示。個人の能力アップと一体感のある職場の両立を目指す。

新制度では定年を65歳に延長。賃金や仕事の内容、配属も継続する。一方で、生産現場で4―5人を統率するリーダー職で若手を登用しやすい制度を導入した。

従来は技能系社員がリーダーに就く際は原則、即時昇進していた。新制度では給与・賞与に直結する職能資格の昇進と役職就任を切り離す。さらにリーダーの役職はローテーションを促すため、原則3年の更新制に改めた。

リーダーは従来、年功序列的に選ぶケースがあり、いったん就くと退職まで務めることも少なくなかった。鉄鋼不況で新卒採用を抑えた時期があり、年齢構成が偏った背景もある。現在は安定的な新卒採用でリーダーの世代交代は進んだ。ただ就任が長期にわたると、若手を登用できず組織運営も硬直化する懸念がある。リーダーは昇進の登竜門だけに見直しは必須だった。「ベテランを有効活用するとともに若手の意欲を引き出したい」(柴田卓労政人事部長)という。

新制度では技能系、スタッフ系の評定基準も改めた。能力と業績を踏まえて総合評価をしてきたが、新たに設けた個人能力評定と組織貢献評定が毎月の給与に、総合評定が賞与や退職金に反映し、金額で社員に明示する。技能はもとより、製造現場ゆえに求められる協調性とチーム全体のアウトプットを向上させる能力を重視する。

「鉄鋼業は個人の技能育成が重要視されるが、チームワークあってこそ個人の能力は生きる」(柴田部長)と組織の一体感を高める形で見直した。

日刊工業新聞2021年6月1日

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