サントリーが山梨大と実証。ワイン用ブドウの成熟期を遅らせる狙い
サントリーホールディングス(HD)は気候変動に対応するため、山梨大学と共同で、ワイン用のブドウの成熟期を遅らせる実証研究に着手した。登美の丘ワイナリー(山梨県甲斐市)でブドウの主枝を開花期の前に剪定(せんてい)し、その後に出てきた芽の成長を促すことで、成熟期を1カ月から1カ月半遅らせる。気温上昇に対応し、収穫期をずらす栽培法を確立することで、産地を変えずに、安定的に質の良いブドウの収量確保を目指す。
ワイン用のブドウは通常、8月上旬頃に収穫する。収穫期の気温は20度C以下が望ましいが、近年、山梨県周辺でも20度Cを超えることが多くなり、ブドウの質や収量などにも変化が起きている。サントリーHDと山梨大が実証研究する栽培法は、気温の下がる秋に収穫期をずらすことで、色味や香り、糖度などを維持することができる。
サントリーHDは実証研究に当たり、登美の丘ワイナリーで栽培する「メルロー」という品種のうち、500本の主枝を5月に剪定した。2021年は全体の1%のブドウの木を対象に実施する。実証研究は3年間の計画で、22年以降は他の品種に対象を広げて栽培量を増やすほか、商品化も目指す。
ワインの産地は南半球、北半球ともに緯度30―50度に位置しており、日本では山梨県や長野県など、夜の気温が低く降水量が少ない盆地が中心となっている。ブドウは成熟期の気温が色や香りの2次代謝物の生成に影響するため、8―9月の夜の気温が高まることは着色の低下、香りの蓄積量の減少につながるリスクがある。
米コロンビア大学の専門家らは20年に、世界の平均気温が2度C上昇すると、現在のワイン生産地が半減する可能性があるとの研究結果を公表しており、気候変動による産地の移動がワイン生産の課題となっている。
日刊工業新聞2021年7月20日