リチウム電池材の粒子内部を高精細で可視化!東北大が実現した手法
東北大学の石黒志助教と高橋幸生教授らの研究グループは、リチウム電池材料の粒子内部の化学状態を高精細に可視化することに成功した。放射光計測データに機械学習・データマイニング手法を組み合わせることで、粒子内部の構造を抽出、分類した。先端機能性材料のナノ構造や化学状態分析に応用でき、高性能で高効率な材料設計につながる。
研究グループは、これまでに「X線タイコグラフィー法」と「X線吸収分光分析法」を組み合わせ、数十ナノメートル(ナノは10億分の1)の空間分解能で試料中の化学状態を調べられる手法を開発。リチウム電池正極活物質のスピネル型ニッケル―マンガン酸リチウム(LNMO)粒子の1粒に対し、この手法を適用した。
計測データを基に構成した画像を分析することで、元素組成比分布や電子密度分布などを得た。これらの化学状態パラメーター間の相関性を、教師なし学習に分類される機械学習・データマイニング手法「データクラスタリング」を用いて調べた。
その結果、粒子内部の不均一な構造を可視化できた。相関性分布の分類から「規則型」「不規則型」「不純物相」と予想される三つの構造分布を持つことが示された。
電池材料など複雑で不均一な内部構造を持つ先端材料の働きは不明な点が多く、内部構造を分析するツールが求められている。研究は理化学研究所、早稲田大学、産業技術総合研究所、北陸先端科学技術大学院大学と共同で行われた。
日刊工業新聞2021年7月9日