営業利益率13%目指す安川電機、「デジタル経営」の全貌
ネットD/Eレシオで余剰金管理
安川電機が2023年2月期までの中期経営計画で収益力の改善に努めている。20年2月期には5・9%にまで落ち込んだ営業利益率を23年2月期には13・0%にまで引き上げる。独自のデジタル変革(DX)「安川DX(YDX)」で経営を見える化し、経費を抑制しながら自動化需要を取り込む。財務基盤は安定しており、市場環境に売上高が左右されても利益を生み出し続けられるようにすることで高い競争力を維持する。
「金額も重要だが営業利益率13%を確保する。利益率を改善することで資本が蓄積できる」と語るのは財務担当の村上周二代表取締役専務執行役員。21年2月期には7・0%まで回復させ、あと2年で利益率を6ポイント積み上げる必要があるが、売上高増と、経費を売上高増加分の10%程度にとどめることで確保する。
これを実現するのがデジタル経営を通じてグループの価値を最大化するYDXだ。経営に関する情報を見える化し、経費をコントロールする。従来は部門ごとに予算を積み上げていたが「トップダウン型に変更」(村上氏)し、計画や足元の状態から経営側が即時に予算と経費を指示できるようにした。
市場環境も回復基調にあり「グローバルでの半導体・電子部品需要の拡大、省人化の加速、環境重視の潮流を追い風とした中長期での高い成長が期待される」と、野村証券の王博瓊アナリストは目標達成は手堅いと見る。
また23年2月期に株主資本利益率(ROE)を現状比7ポイント増、投下資本利益率(ROIC)を同8ポイント増のそれぞれ15・0%以上を目指す。「利益を出して成長投資につなげ、さらに利益を上げる」(村上氏)という好循環につなげる。自社株買いは否定しないものの「実施するとROEは上がるがROICは下がる。両方の指標を掲げ、一定の規律で財務戦略を実施する」(同)とバランスを取る。
親会社所有者帰属持ち分比率は11年3月には35・2%だったが17年3月からは50%を超え安定しており、今後も同水準を維持していくと見られる。余剰資金を作らないように有利子負債から現預金を差し引いた「ネットD/Eレシオ」を安全性の指標にし、0・1から0・2の間を維持する。生み出したキャッシュは先行投資に利用するか株主やサプライヤーに還元する。