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安川電機が開発拠点を新設、“勝つ製品”をタイムリーに

安川電機が開発拠点を新設、“勝つ製品”をタイムリーに

今春開設予定の「安川テクノロジーセンタ」(イメージ、安川電機提供)

オープンイノベ加速

安川電機は2021年春、北九州市八幡西区の本社敷地内に研究開発拠点「安川テクノロジーセンタ(YTC)」を開設する。グループの技術開発を集約し、オープンイノベーションを加速するのが狙いだ。現在でも超高性能のサーボモーターやロボットを手がける同社だが、あらためて研究開発を強化する狙いを技術開発本部長の熊谷彰常務執行役員に聞いた。(川口拓洋)

―今春にYTCを開設します。

「これまでは品質や性能の高さなど製品の価値を高めることができればビジネスは伸びた。だが、今は装置同士がつながるなどトータルで事業の価値を高める必要がある。YTCは安川電機の事業知識や開発データを集めるとともに、顧客の力を借りながらオープンイノベーションを進める。工場・モノづくりを変化したいニーズや手がけたことのない分野の自動化ニーズが高まると、自社のコンポーネントだけでは仕事ができない」

―技術開発の方針を教えて下さい。

「既存のビジネスを守るため、最先端の技術を使い最高のモーターやロボットを開発、製造する。それだけではなく、新領域や使い方も模索する。世界一のモーターやロボットを基本に顧客と新しい価値を生み出す。この両方でオープンイノベーションに取り組む」

―具体的には。

「例えばモーターの磁石やモーター自体の素材などは、メーカーと一緒に評価する。ロボット分野では減速機だけでなく、中のグリース(潤滑油)も共働で開発する。YTCでは高いセキュリティーを保持する『共創の実験室』を複数つくる。顧客と担当者しか入れない部屋で企画段階から議論し、実験を進め、タイミング良くアウトプットする」

―九州工業大学や東京工業大学との連携も進んでいます。

「九工大とは『ロボットのあるべき姿』を共創している。第5世代通信(5G)を使いながら人とロボットがどんな場面で連携できるかを模索する。画像や環境認識などに精通する先生と連携し、次世代の自動化をつくり上げる。東工大とは今の半分の重量のアクチュエーターの開発を進める。数年から10年程度かかるかもしれないが、小型・軽量で自由な動きを可能にする関節の実現を目指す」

安川電機常務執行役員・熊谷彰氏
【チェックポイント/“勝つ製品”タイムリーに】

YTCは研究開発だけでなく、オープンイノベーションの拠点となる。目指すのは、世の中で勝つ製品をタイムリーに出すことだ。産産連携や産学連携によって材料や部品、解析、応用、新分野への適用までが連携対象となる。社員の意識改革も図る。取り組んだプロセスではなく、アウトプットを評価するため、連携によって生み出されたモノも成果になる。安川電機ではオープンイノベーションにより、共創力と競争力をさらに高める。

日刊工業新聞2021年1月19日

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