トヨタ・ホンダ・ダイハツは?コロナ禍のマレーシアで行動制限が日系直撃
別拠点から供給検討も
新型コロナウイルスの感染拡大が続くマレーシアで、現地の事業活動への影響が深刻化している。1日にはクアラルンプール市など多くの地域で、最も厳しい行動制限を課す「強化された移動制限令(EMCO)」が公表。現地工場では操業再開にも時間がかかりそうで、別拠点からの供給を検討する企業も出始めた。
トヨタ自動車は、マレーシア政府の制限令を受けて6月1日に工場の稼働を止めた。現在も操業停止が続いている。
ホンダは2輪車、4輪車工場の稼働を停止している。同国政府から6月末以降も、工場の出社人数を通常の1割以下に抑える措置を継続するよう求められたため、生産活動が難しいと判断した。
ダイハツ工業はマレーシア合弁会社のプロドゥアを6月1日から操業停止し、現在も再開のめどが立っていない。
プロドゥアは2020年3―5月のコロナ禍による操業停止・制限以降、同国政府の減税による需要喚起策で、「大きい月は前年同月比30%増まで回復していた」(ダイハツ広報)。操業停止による減産規模は月間2万台弱に上る。
6月初旬には産業界は全般に、設備保全の要員程度ならば出社を政府に申請して認められていたが、今はそれも厳しくなっているという。日野自動車やいすゞ自動車も同国政府の要請を受けて工場の稼働を停止している。両社とも稼働再開時期は未定とする。
ヤマハ発動機は中小型2輪車を生産する工場(セランゴール州)を6月上旬から停止している。主に同国内向けを生産しており、20年12月期の卸販売台数は約28万5000台。稼働再開の時期は未定。
ローランドは電子ピアノと電子ドラムの主力工場であるマレーシア工場(同)を5日に停止した。同国政府の制限令の期間である16日まで停止する予定。直近では6月25日に停止し、1日に出勤率30%で稼働を再開したが、制限令強化で再度停止となった。
三井金属は、スマートフォン向け電子材料を手がける子会社のマレーシア工場(同)を16日まで操業停止する。
同国政府の制限令に従うもので、操業停止期間中は必要に応じて、日本と台湾の生産拠点から製品供給を支援する。
日本貿易振興機構(ジェトロ)クアラルンプール事務所の小野沢麻衣所長は、制限令について「セランゴール州内のほぼすべての日系企業は操業不可能業種に該当し、完全に操業を停止せざるを得ない状況になっている」と説明。事業へのダメージは「非常に大きい」と強調する。
自動車産業への影響については「6月1日から規制が続き、1カ月以上生産ができていない。利益損失は非常に大きい」とし「東南アジア諸国連合(ASEAN)を含めたグロバールサプライチェーン(供給網)への影響も懸念される」と指摘する。