世界経済の減速が直撃、2019年のグローバル出荷指数は大幅マイナス
経済産業省では、製造業のグローバル展開を踏まえ、日系製造業の国内外の拠点全体での出荷の動向を一元的に捉える観点から、国内拠点からの出荷(国内出荷)と海外現地法人の海外拠点からの出荷(海外出荷)の動きを比較可能な形で指標化し、合算した「グローバル出荷指数」を試算し、公表している。この度、2019年の数値がまとまったので、概略を紹介する。
2018年の最高値から一転
まず、日系製造業の国内拠点からの出荷と海外現地法人の海外拠点からの出荷を合算したグローバル出荷指数は、2019年は指数値101.9、前年比マイナス2.4%と3年ぶりの低下となった。日系製造業の国内外合わせた活動は、近年はほぼ継続して上昇の動きを見せ、2018年には2015年基準での最高値を記録したが、2019年は一転して大幅な低下となった。
グローバル出荷の内訳をみると、日系企業の海外生産拠点からの出荷である海外出荷指数は、指数値105.6、前年比マイナス1.8%と、2015年基準(2013年~)では初の低下となった。
また、日本国内の生産拠点からの出荷である国内出荷指数は、指数値100.2、前年比マイナス2.7%と3年ぶりの低下となり、海外出荷指数より大きく落ち込んだ。このうち、国内向けは前年比マイナス2.0%の低下だったのに対し、輸出向けは前年比マイナス5.5%の低下となり、輸出向けの方が大幅に低下した(上表参照)。
2019年は世界経済が減速したことで、海外出荷指数の初の低下や、国内出荷の輸出向け指数の大幅な低下に大きく影響したようだ。
国内出荷低下の影響大きく
グローバル出荷指数の前年比マイナス2.4%低下に対する影響度(寄与)をみると、国内出荷がマイナス1.84%ポイント、海外出荷がマイナス0.57%ポイントとともに低下に寄与している。
2018年までは日系製造業のグローバルな活動を国内拠点・海外拠点の両輪が支えていたが、2019年は国内拠点・海外拠点ともに出荷が低下し、特に国内拠点からの出荷が低迷したことが、日系製造業の出荷全体(グローバル出荷)を押し下げる要因となった。国内出荷の低下は、前述のように国内向け・輸出向けともに低下したが、特に輸出向け出荷が大幅に低下している。また、輸出の低下は、サプライチェーンを通じて国内向け生産・出荷にもマイナスの波及効果をもたらすことから(参考)、 世界経済の減速は、国内出荷の低下にも大きく影響したと考えられる。
海外出荷は輸送機械工業などが低下
2019年の海外出荷指数の動きをみると、輸送機械工業は指数値107.2で前年比マイナス3.4%と3年ぶりの低下、汎用・生産用・業務用機械工業は指数値107.7で前年比マイナス2.9%と3年ぶりの低下、電気機械工業は指数値103.7で前年比マイナス0.2%と2年連続の低下となった。一方、化学工業は指数値107.1で前年比1.2%と6年連続の上昇、それ以外の業種計も上昇となった。
2019年通年でみれば低調な海外出荷だが、そのうち低下となった3業種について四半期(季節調整済指数)の推移をみてみると、汎用・生産用・業務用機械工業は2019年第2四半期に、電気機械工業は2018年第4四半期に、それぞれ大きく低下したものの、その後は回復傾向で推移している。しかし海外出荷の主力である輸送機械工業は2018年第2、3四半期に指数値111.2と2015年基準の最高値を記録以降は、5期連続の低下と指数水準を大きく落としている。またそれ以外の業種も2019年第2四半期以降、低下傾向が続いている。
このように2019年は、後半になるにつれ明るい動きの業種も増えてきたものの、輸送機械工業とそれ以外の業種は低調に推移し、海外出荷は低下することとなった。本年は新型コロナウイルス感染症の世界的大流行が、世界各地の企業の生産・販売に多大な影響を及ぼしており、この先どのような動きとなるのか、注視したい。
ASEAN4、中国の現地法人からの出荷が低調
海外現地法人の海外拠点からの出荷を当該現地法人が立地する地域別に指数化した地域別海外出荷指数をみると、近年の日系製造業の海外出荷の上昇はASEAN4(マレーシア、タイ、インドネシア、フィリピン)や中国といったアジアの現地法人がけん引してきたが、2019年は世界的な景気減速の動きを反映した結果となった。
2019年は、ASEAN4指数は指数値116.4、前年比マイナス2.8%と5年ぶりの低下、中国指数は指数値110.2、前年比マイナス2.2%と4年ぶりの低下となった。それ以外の地域も3年ぶりの低下となった。一方、北米指数は指数値95.2と低水準ではあるものの前年比3.1%の上昇となった 。ただし北米も2019年は第2四半期以降は低下が続き、低調となったことがうかがえる。
国内出荷 ほぼすべての業種が低調
2019年の国内出荷指数の動きをみると、汎用・生産用・業務用機械工業は指数値103.8で前年比マイナス7.5%低下、電気機械工業は指数値95.8で前年比マイナス5.3%低下、化学工業は指数値103.7で前年比マイナス0.6%低下、輸送機械工業は指数値106.9で前年比マイナス0.1%低下、それ以外の業種計も低下となった。
輸送機械工業はほぼ横ばいの微減にとどまったが、その他の業種は総じて低調だった。
出荷海外比率は継続して上昇
グローバル出荷指数を用いて、「出荷海外比率」、「海外市場比率」、「逆輸入比率」の3つの指標も試算している。これら3つの指標は、「グローバル化比率」と呼び、製造業のグローバル化の指標としている。
このうち、日系製造業のグローバル出荷全体に占める海外出荷の比率である「出荷海外比率」は継続的に上昇しており、2019年も32.4%と前年より上昇し、最高値(2015年基準)を更新した。しかし2019年に関しては、海外現地法人の海外拠点からの出荷に勢いがあったわけではなく、国内出荷の減少から相対的に海外出荷の割合が大きくなった結果だった。
一方、グローバル出荷全体のうち、日本市場以外の海外市場向けに出荷されたものの比率である「海外市場比率」は44.1%と前年より低下となった。また、日本の輸入に占める日系現地法人の日本向け輸出の割合を示す「逆輸入比率」は25.2%の横ばいとなった。
2019年については、世界経済の減速の影響から、日系製造業のグローバル出荷は低調な結果となった。2020年については、新型コロナウイルス感染症の世界的大流行の影響によるサプライチェーンの混乱や経済活動の停滞が予見される中、グローバル出荷指数も、本年前半は大幅に低下する可能性がある。現在、世界各国で経済活動再開の動きもみられるところだが、今後の動向も注意深くみていきたい。
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