独自の成形加工技術持つメーカーの倒産劇、取引先は「寝耳に水」のワケ

国上精機工業など3社、株主変更に後味の悪さ

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プラスチック関連部品メーカー、国上精機工業など3社は、4月16日に東京地裁へ民事再生法の適用を申請した。過去に信用不安情報はほとんど流れておらず、多くの取引先には「寝耳に水」の出来事だった。

国上精機工業は1960年代半ばの創業時から合成樹脂の成形加工を手がけ、近年はカーオーディオパネル、スマートフォンケースなどを主力製品として扱い、国内外に複数の事業所を設置。独自の成形加工技術を背景に、01年8月期には売上高約46億6500万円を計上していた。

しかし、近年は安価な海外製品との競争から赤字が続き、受注量も減少するなか、直近10年の年売上高は20億円台に縮小。この間、事業再構築を進め、生産効率の向上やコスト削減を図ったものの、20年以降は新型コロナウイルス感染症の影響もあり業況がさらに悪化していた。借り入れ負担も重荷となるなか、今年4月、関連2社とともに民事再生法申請に追い込まれた。

同社はかつてオーナー会社だったが、14年に独立系投資ファンドがグループの経営権を取得し、一代で会社を築いた創業オーナーが退いていた。ファンド側が役員派遣や資金支援を通じて再建に注力し、約7年が経過したタイミングで同ファンドは売却を決断。スポンサー変更については申請直前の3月末、売却先には触れない形ながら、株式譲渡の事実をファンドが自社ホームページ上で明らかにしていた。

この間、一部取引先には通知されていたが、株主変更の事実を今回の再生法の一報で知った先もあった。結果的に、事前に倒産の「予兆」はあったが、取引先によっては掴みづらいものだった。一定の債権カットを強いられることになる取引先にとって、今回の民事再生法は「後味の悪さ」が拭えないものとなったようだ。同社が再建を目指すに当たっては、他の一般的な再生企業以上に、取引先の信頼回復がまずもって求められる。(帝国データバンク情報部)

国上精機工業(株)

住所:横浜市中区尾上町2―27 代表:馬場丈夫氏 資本金:2000万円 年売上高:約12億4000万円(20年12月期) 負債:約26億円(3社合計)

日刊工業新聞2021年7月1日

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