松屋・そごう・西武…小売り大手がスタートアップと連携するそれぞれの思惑
小売り大手がスタートアップとの連携を広げている。課題を解決する手段としてスタートアップの技術・サービスを活用。新分野進出に加え、店舗の業務効率化など、さまざまな場面で連携が進んでいる。(編集委員・大友裕登)
松屋は、弁当や総菜などの「デパ地下グルメ」をバイクで当日配送するサービスを浅草店(東京都台東区)で始めた。コロナ禍で来店をためらう顧客向けに、商品を有料で自宅に届ける。協力するのはオンデマンド配送プラットフォーム「CREW Express(クルーエクスプレス)」を手がけるAzit(アジット)だ。松屋顧客戦略部の服部延弘担当部長は「形だけつくったデリバリーではなく、しっかり顧客に利用してもらえるものにしたかった。どうしたらいいか考え、組ませてもらった」と話す。
Azitの吉兼周優最高経営責任者(CEO)は「ただ配送して終わりでいいとは思っていない。今後は顧客がどういうものを望んでいるのかのビッグデータ(大量データ)がとれていく」と指摘する。「(松屋やテナントが)望んでいるデータになると思う。よりよいサービスにつながっていく」と強調。デジタル技術を活用した今後のサービス改善にも意欲を示した。
ファミリーマートはスタートアップのアプリケーション(応用ソフト)を活用した店舗支援に着手した。導入を始めたのはタブソリューション(東京都新宿区)が開発した労務管理アプリ「ロムテン」。同アプリの利用で在留カードの偽造識別を行うほか、就労可能時間を判定できる。通常約10分の作業が約5分に削減できるという。外国籍スタッフが増加傾向にある中、加盟店での雇用時の手続きや労務管理の負担の軽減を後押しする。
このほか、そごう・西武は米スタートアップの「Bodygram(ボディグラム)」の技術を活用した非接触採寸システムを運用。スマートフォンで性別や身長・体重などの情報を入力し、正面と側面の全身写真を撮影するだけで身体サイズの推定採寸ができる。西武池袋本店(東京都豊島区)などの紳士服ワイシャツ売り場に導入。若い世代を中心に好評でトライアルを経て常設となった。
小売り各社は、デジタル変革(DX)に代表されるデジタル化などを経営の注力テーマに挙げている。今後もスタートアップとの連携が相次ぎそうだ。