配送事業に乗り出すENEOS、高さ1mの自動宅配ロボットは「かわいい」と高評価
出店者10社参加
ENEOSホールディングスは自動宅配ロボットによる配送事業に乗り出す。ZMP(東京都文京区)とエニキャリ(同千代田区)と共同で、2月8日から26日まで東京都中央区の佃・月島エリアで実証試験を実施した。出店者として松屋やローソンなど10社が参加。専用サイトで商品の注文を受け、サービスステーション(SS)からマンションまでロボが商品を届けた。今後は独自の配送インフラを構築し、事業化を目指す。
「通ります」「左に曲がります」。高さ1メートル程の小さなワゴン車のようなロボットが声を響かせて走ると、近くを通る人が興味深げに見守る。きょろっとした目が特徴的だ。ENEOS未来事業推進部の吉田貴弘グループマネージャーは「かわいいといった好意的な声が多い」と周囲の反応に手応えを示す。
同社の運営するSS「Dr.Drive月島SS」(東京都中央区)に、ZMP製自動宅配ロボ「デリロ」2台を配備。ENEOSとエニキャリが共同構築したプラットフォームから注文を受けると、人がロボに商品を積んで出発する。時速5キロメートル程度で人が歩く速さと変わらない。道路交通法上では歩行補助具の位置付けだ。実証では1メートル後ろから人がついて監視した。
注文の需要増
実証の配送先は中央区佃のタワーマンション3棟。ロボがマンションの入り口に到着すると、購入者に通知。購入者が受領用の2次元コードをかざすと、ボックスが開いて商品を受け取れる。配送時間は30分―1時間。手数料は297円(消費税込み)と人と同等に設定した。1日当たり2―3件の注文があったという。
新型コロナウイルス感染拡大の影響もあり、ネットなどを通じて注文する需要は増えている。実証に参加した松屋フーズは「配送する人の確保に苦慮しており、ロボットは解決策の一つとして期待している」と評価する。実証では注文の対応は問題なく、公道の安全な走行も確認した。今後は注文しなかった参加者の声を聞き、次回の実証に生かす。
2021年度中に実証の第2弾を実施し、22年度中にビジネスフェーズへ移行する。次の実証ではロボが店舗まで商品を取りに行くことや、1人で複数台のロボを監視することなどを考えているという。配送先はマンション以外も検討している。
SS1万3000カ所
佃・月島エリアはZMPの1人乗り自動運転ロボを実証するなど「ロボタウン構想」を掲げ、ロボが受け入れられやすい。同エリアで先行して事業化する考えだ。自動宅配ロボを配備する拠点は全国1万3000カ所のSSや、電動キックスケーターなどの小型モビリティーのステーションを活用する構想だ。
世界的な脱炭素の流れで自動車の電動化が進み、給油の需要は先細りが避けられない。ENEOSはSSの新事業として、ランドリーなど生活関連サービスを拡充する方針だ。「自動宅配ロボはSSの新サービスと親和性がある」(吉田マネージャー)とみている。(編集委員・川口哲郎)