建設機械が中国市場でまた試練、日本製品に勝算はあるか
中国の建設機械市場に不透明感が漂う。2020年度は中国が新型コロナウイルスの感染封じ込めに成功したことで大きく伸びたが、21年度は反動減が予想される。リーマン・ショック以降の中国市場の急膨張とその後訪れた急失速で、建機メーカー各社は“授業料”を支払った苦い過去がある。地場メーカーとの低価格競争への警戒感も強まり、日本勢は手探りの状況だ。(編集委員・嶋田歩)
コマツは「建設機械・車両」の中国売上高で21年度に前年度比11%減を見込む。20年度は同15%増と急伸しただけに慎重な姿勢が明確だ。地域別売上高に占める中国の構成比率は7%から6%へ下がる見通し。
日立建機は21年度の中国の売上高が同24%減になると予想。平野耕太郎社長は前年度比19%増と伸びた20年度を振り返り「春節が2回あったような状況」と分析。武漢市で発生したコロナウイルスのため春節商戦が4月以降にずれ込み、20年度の売り上げがかさ上げされた。
21年度の春節は22年2月の1度きり。単純計算で春節商戦の売り上げが半分になる。「先行きはよくわからないが、好転などの環境変化があれば直ちに対応する」(平野社長)と注視する。
各社が神経をとがらすのが低価格競争だ。コマツによると20年度の中国油圧ショベル台数の伸びは同社や米キャタピラーなど外資系が39%増だったのに対し、中国メーカーを含む総需要は72%増と2倍近くに達した。21年度予想は外資系が20―30%減なのに対し、総需要は5―15%減と、落ち込み幅が小さい。
つまり、シェアを伸ばしているのは三一重工などの中国企業で、外資系は価格競争に押されて台数、利益とも減らしていく構図が浮かび上がる。
コベルコ建機を擁する神戸製鋼所は建設機械部門の懸念材料に「競争激化に伴う中国事業の採算性低下」を挙げる。建設機械部門の利益は20年度の127億円から21年度は45・2%減の70億円に落ち込む。住友建機も「台数は4月から急ブレーキ。1―3月に高すぎた反動なのか、10年代半ばのように車両がだぶついて不良債権化する予兆なのか、建機の稼働状態を見ながら調べている」(関係者)と話す。
“安かろう、悪かろう”の印象があった中国製ショベルだが、エンジンや油圧機器など心臓部に日本製を使うことで性能、品質が向上。「価格で中国メーカーに対抗するのは難しい。20トン以上の大型機種にシフトし利益重視でいく」とコマツの小川啓之社長は明かす。
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焦点は21年度に東南アジア市場に価格競争の影響が波及するかどうか。成長戦略の修正を迫られる恐れがある。