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仮想空間でレジに並ぶ列を作る?サイトへのアクセス集中を防ぐサービスとは

ウェブアクセス集中防ぐ ワクチン予約サイトなど活用

デンマークのQueue―it(キューイット)は、ウェブサイトやアプリケーション(応用ソフト)へのアクセス集中を防ぐサービスを提供する。予約サイトにアクセスした人を“仮想待合室”と呼ばれるサーバーに誘導し、順番に案内する。東京都が医療従事者向けに開設した新型コロナウイルスワクチン接種予約システムの再開時にも導入された。電子商取引(EC)やチケット販売業界、公共機関などへの導入拡大を進める。

ニルス・ヘンリック・ソダーマン最高経営責任者(CEO)は「混雑している小売店のレジで、一人ずつ対応しなければならない場合を想像してほしい。(自社のサービスを)仮想空間でレジに並ぶ列を作るようなものだ」と説明する。

予約サイトなどにアクセスした利用者は「ウェイティングルーム」と呼ばれる同社のサーバーへ自動的に送られる。この際、利用者には固有の整理番号やタイムスタンプが与えられる。先着順でアクセス権限が与えられ、順番がくれば予約サイトに再接続される。待機画面では待ち時間やプログレスバーが表示されるため、ちゃんと待っているという安心感があるのが特徴だ。

「ウェブサイトは通常の通信量を前提に構築されている」とソダーマンCEOは指摘。同社のサービスは通信量をコントロールすることでサーバーのダウンを防ぐ。

「サイトのキャパシティーを需要に合わせて常に拡張することは技術的に難しく、コストもかかる」(ソダーマンCEO)が、SaaS(サービスとしてのソフトウエア)形式で提供するため、導入先のコスト負担が小さくて済む。拡張に限界があるウェブページにも対応する。

世界各国でサービスを展開し、3月時点で累計ユーザー数は200億人を超えた。日本を戦略的な重要拠点とみなし、ワクチン予約などを契機にさらなる市場展開を進める。(森下晃行)

日刊工業新聞2021年5月28日

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