コロナ変異株にも有効か、VLPセラピューティクスが日本で新ワクチン臨床
VLPセラピューティクスジャパン(東京都千代田区、赤畑渉代表職務執行者)は開発中の新型コロナウイルスワクチンの第1相臨床試験を6月までに日本で開始する。同ワクチンは現在供給されているRNAワクチンに比べて生産効率が高く、非臨床試験では変異株にも有効性が確認された。12月に第2相臨床試験を開始、国内で承認取得できれば2022―23年に供給できる見通しだ。
「saRNAワクチン」と呼ばれ、体内に投与されたRNAが自己増殖して大量の抗原をつくりだす技術を採用する。理論的にはワクチン127グラムから1億2700万回の投与分を確保でき、従来のRNAワクチンの20倍に相当する。
また、ウイルスの細胞への侵入を効果的に防ぐ設計がなされている。ウイルスは、表面のスパイクたんぱく質が細胞膜上の受容体に結合し細胞に侵入する。開発中のワクチンは、受容体への結合部を狙ってウイルスの病原性を抑える中和抗体を効率良く作成し変異株にも効果を生むと見ている。ワクチンの製造は提携する富士フイルムが担う。数カ月で1億回分の生産が可能になると見られ、将来は海外への供給も目指す。
VLPセラピューティクスジャパンは親会社が米VLPセラピューティクス(メリーランド州、赤畑渉最高経営責任者〈CEO〉)。米国立衛生研究所(NIH)でワクチン研究をしていた赤畑渉氏らが13年に設立したバイオベンチャー。世界でsaRNAワクチンの研究が進む中、VLPセラピューティクスジャパンは新型コロナワクチンの開発を通じ世界初の実用化を狙う。
日刊工業新聞2021年4月5日