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近藤那央のロボット解体新書! 力覚センサメーカー ワコーテック(前編)

力覚センサでロボットを器用に、臨機応変に!
近藤那央のロボット解体新書! 力覚センサメーカー ワコーテック(前編)

右から、鈴木信人東京営業所長、岡田和廣社長、近藤那央、東京営業所 営業部 海外企画課 岡田美穂氏


安くて強くて壊れにくい


 同社の力覚センサは縦、横、斜め、およびそれぞれの軸の回転方向の計6軸の動きを感知できる。「Wii Fitのもう少し高性能なものという感じです」(鈴木所長)。

 しかし同社のセンサの優位性は、感知の仕組みにある。「Wii Fitもそうなのですが、一般的な力覚センサは『ひずみゲージ式』というものを採用しています。例えば体重計は、空洞の空いた鉄の塊がぐっと押されたときの歪をみています。これが『ひずみゲージ式』です」(鈴木所長)。

 しかし産業用ロボットに必要とされているようなひずみゲージ式のセンサは作るのが難しい為に昔は1個100万円程と高価で、お弁当箱くらいの外付け機器を用意する必要もあました。さらに壊れやすいという欠点もあり、よほどの顧客からの強い要望がなければ力覚センサは搭載されませんでした。

 それに対し、同社の力覚センサ「DynPick」は「静電容量方式」という方式を採用し、シンプルな構造で部品点数が少なく、外付け機器も不要のため、低価格を実現しました。また負荷がかかってもストッパー機構でセンサを保護するため、耐久性に優れています。

鈴木所長「安くて強くて壊れにくい、というのが当社のセンサの特徴です。1個約20万円で販売しています」
近藤「DynPickが発売されていなかった頃はどうしていたんですか」
鈴木「力覚センサを数百万円かけて導入するくらいなら、人が作業した方が安いし確実、という考えだったでしょうね」
近藤「じゃあ、そもそもロボットに力覚センサを導入しようという考えにならなかったんですね」
鈴木所長「またロボットはティーチング※の時にぶつかったり、過酷な現場で作業したりすることも多いので、壊れにくいという点が一番お客さまに重視されていますね」

『QRIO』に採用されるはずだった


鈴木所長「当社は2007年に設立し、ロボット向けの力覚センサ一筋でやってきました。でも最初はあまり売れなくて…」
岡田社長「開発をしながら販売をしていて。当時は認知度も低かったんですね。はじめに興味を持って買ってくださった会社さんは今でも覚えています、いい会社さんです(笑)
近藤さん、ソニーさんのAIBOって知っていますか?」
近藤「はい、AIBO今も飼っています」
岡田社長「AIBOの後に『QRIO』という2足歩行ロボットが開発されていたのですが、そこに力覚センサの採用が検討されていました。途中で計画が中止になってしまい、ソニーさんがロボット関係の事業が進めていたら、もっと早い段階で
たくさん力覚センサが売れていたでしょうね」
近藤「小学生の頃、ソニーのショールームに連れられてよくQRIOを見ていました。アルデバラン社のNaoもQRIOに似ていますよね」

鈴木所長「センサが今の形のDynPickになったのが2008年なのですが、そこからロボットメーカーさんと改良を重ねまして、2012年に本格的に量産をスタートしました。その年にロボットメーカー4社にオプション採用いただき、一気に出荷数が伸びました。したがって力覚センサの業界規模も拡大しました」
近藤「ロボット業界に革命を起こしたんですね(笑い)」
岡田社長「2015年には力覚センサの国内シェアが、ある調査機関の調査によりますと83%になりました。2014年にはロボット大賞も受賞しました」

※1 Micro Electro Mechanical Systems(微小電気機械システム)の略。半導体の微細加工技術を利用して、基板上に機械部品と電子回路を集積したデバイス。一般に、マイクロレベル(1000分の1ミリメートル)の微細機械構造を備える。プリンターヘッド部の微小ノズルや自動車の加速度センサーなどが代表的。
※2 教示作業。産業用ロボットに、制御プログラムを記憶させること。

(後編は11月22日公開)
ニュースイッチオリジナル
昆梓紗
昆梓紗 Kon Azusa デジタルメディア局DX編集部 記者
ロボットのアームの先にちょこんとついている力覚センサ。「2015国際ロボット展」ではどんなロボットについているか、注目してみてください!

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