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トヨタ出身の「2枚看板」、新生アイシンの経営変革をけん引

「商品の強化と構造改革を同時並行で」
トヨタ出身の「2枚看板」、新生アイシンの経営変革をけん引

副会長になるアイシンの伊勢社長(左)と次期社長の吉田氏

4月1日、アイシン精機とアイシン・エィ・ダブリュ(AW)が合併し、統合新会社アイシンが始動した。アイシンは主力の変速機やブレーキ、ドアなど多岐にわたる自動車部品を手がける。それだけに「アイシンはトヨタ自動車グループで重要な存在だ。アイシンが強くならなければ、しいては日本の自動車産業の競争力がなくなる」。アイシン取締役の尾崎和久はこう力を込める。

4月に始動したアイシンは6月に新たな経営体制となる。元トヨタ副社長で豊田中央研究所(愛知県長久手市)会長の吉田守孝が社長に就任し、トヨタ取締役執行役員の小林耕士が社外取締役に就く予定。アイシン社長の伊勢清貴は副会長を務める。伊勢は「商品の強化と構造改革を同時並行でやらないといけない。私が構造改革を担い、吉田新社長には事業軸でみてもらう」と説明する。

伊勢と吉田というトヨタ出身の「2枚看板」で経営の効率化と、競争が激化するCASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)対応など事業の強化を加速させる考えだ。自動車業界は事業環境の変化がめまぐるしく、各社は単独での対応は厳しくなっている。アイシンはトヨタなどとのより密な連携が重要になる。

変革の象徴としてグループ2大会社が統合して誕生したアイシンだが、より踏み込んだグループ経営の効率化はこれからだ。例えば、アイシングループは約200社あるが、国内外の子会社を対象に統廃合などを進めている。

自動車産業が右肩上がりの時代には会社を増やし対応しなければいけないこともあったが、伊勢は「無駄は放置できない」と危機感を示す。アイシンはデジタル変革(DX)を推進する組織を新設。DXを生かしたさまざまな効率化を強化する狙いだ。

吉田は伊勢と同じくトヨタで車両開発に長く携わってきたため、「アイシンの商品などにすぐに対応できるはずだ」と伊勢はみる。課題の一つがブレーキだ。アイシングループで主にアドヴィックス(愛知県刈谷市)がブレーキ製品を担うが、伊勢は「まだ利益を出せていない」と説明する。

電動化や自動運転が進展する中で、回生ブレーキや自動ブレーキといったさまざまな性能が求められる。伊勢が務めるブレーキなどの「走行安全カンパニー」プレジデントを吉田が引き継ぐ予定だ。

電動化ではトヨタとの連携も重要性を増す。トヨタやデンソーと共同出資し、電動駆動モジュール「イーアクスル」などを手がけるブルーイーネクサス(愛知県安城市)の次期社長に尾崎が内定した。尾崎はアイシングループで駆動系部品を担う部門トップなどを歴任。尾崎やトヨタの知見などを生かしつつ電動化対応商品を強化する考えだ。

一方で伊勢は「トヨタに頼っているだけは生きていけない」と他社への展開も増やすことが製品の品質などで相乗効果を生む。アイシンが統合を経て将来像を定め、アクセルを踏み込む。

(敬称略)
日刊工業新聞2021年4月2日の記事に加筆

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