発電から生じた廃熱ガスでトマト栽培、エア・ウォーターが長野の農園で実施
エア・ウォーター(AW)は木質バイオマス発電設備を使い、電気と排熱、排ガスの三つを有効活用する次世代農業モデルの構築に乗り出した。長野県安曇野市でAWグループのトマト農園の隣に、約30億円を投じて出力2000キロワットのバイオマス発電設備や専用チップ工場を完成。発電した電気は売電する。排熱は農園の温度調節に、排ガスは濃度調整した上で作物の成長促進にそれぞれ使う。排ガスまで農業に使う事例は珍しく、環境価値の高い野菜づくりを目指す。
今回の農業モデルは電力事業部とグループのエア・ウォーター農園(札幌市中央区)などが連携して進めていく。木質バイオマス発電は、ドイツ製のコージェネレーション(熱電併給)設備40台を輸入しシステムを構築。試験運転を重ね、90数%の高効率稼働にめどをつけた。また安定した材料調達に向け、長野県森林組合連合会などから未利用木材の供給協力も得た。
AWは安曇野市でM&A(合併・買収)により取得した広大な農園で、生鮮トマトの施設栽培を2011年から行う。現在は液化石油ガス(LPG)を使った温水供給で施設の温度を調整し、光合成促進用に炭酸ガス(二酸化炭素)も購入する。
バイオマス設備の稼働で、再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)の売電から収益を得て、排熱と排ガス再利用でLPGと炭酸ガスの購入量も大幅に減らせる。結果、農業経営の収益拡大が図れるという。
熱の再利用はトマト栽培で有効活用できることを確認した。一方、排ガスの再利用は、AWの研究施設も協力し収穫拡大に最適な濃度や量を導いていく。AWは今回導入したバイオマス発電設備を、年内に地域事業会社を通じ外販する計画だ。
日刊工業新聞2021年3月23日