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新型コロナ「終息」へ、複数の検体を混合して一度に検査する「プーリング」を!

日本は新型コロナウイルス感染拡大で二度の緊急事態宣言を経験した。ウイルス検出のためのPCR検査も聞き慣れた言葉となったが、緊急事態宣言を発出しなくて済むPCR検査の体制づくりは議論の余地がある。

発熱などの症状で陽性が疑われる被験者の陽性率は約5―10%と高い。一方で厚生労働省が感染状況の疫学調査として2020年12月に実施した抗体検査では陽性率が東京都で0・91%、宮城県で0・14%と地域によってバラつきがあったが、全国的にはほとんどの被験者が陰性だったという。

だが医療現場は逼迫(ひっぱく)しているし、重症化による死亡例も多い。これは陽性者がゼロにならなければ“緊急事態”が続くことを意味している。新型コロナに打ち勝つためには検査現場の状況を見極め作業効率を向上させ、無症状陽性者の抽出を徹底することが必要だ。それにはPCR検査が新型コロナ対策の非常に重要なポイントとなる。

陽性者抽出急げ

無症状陽性者のあぶり出しには「国民皆検査」が効果的だ。ただ、無症状など自費検査にかかる費用は安くない。ほかにも日本では検査に長時間かかるなど課題があり、検査者は1日数万人と諸外国と比べて低い。これらを解決するには複数の検体を混合して一度に検査する手法「プーリング」が有効だ。検査費用の抑制と効率化による早期の結果判明につながるが、国内ではまだ“市民権”を得ていない。

海外ではプーリングによるPCR検査が実用化され、低価格な多量検体一括処理が検査体制を支えている。国内で新型コロナのまん延を防ぐためにもプーリングによる国民皆検査の早期実施は喫緊の課題だ。医療機関において、当社をはじめとする医療機器メーカーの自動PCR検査装置とプーリングを組み合わせれば、個別検査と変わらない精度で広範囲に合理的な混合検体PCR検査体制を構築できる。

陽性者を1人も残さないように、そこに照準を定めた基本政策が今こそ求められている。一つの検査施設開設にかかる費用は約5000万円。全国500カ所と仮定すると、250億円程度の予算がかかると推測されるが、医療現場の改善などを考えれば、高くはないのではないだろうか。国内でワクチンの接種が始まり、コロナ収束に一歩近づいた。ただ、収束から「終息」へと導くためにも、無症状感染者の抽出は急務だ。

【略歴】田島秀二(たじま・ひでじ)76年(昭51)中央大理工卒、同年アドバンテック東洋入社。89年プレシジョン・システム・サイエンス入社、同年社長。東京都出身、72歳。
日刊工業新聞2020年3月22日

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