【東京五輪】海外客見送りで経済損失2000億円!インバンド需要消失で『あきらめ型』廃業の懸念
経済損失2000億円、雇用情勢悪化も懸念
政府が東京五輪・パラリンピック開催時の海外客受け入れを、見送る方向となった。新型コロナウイルスの感染がまだ予断を許さない状況にあり、変異種のまん延も懸念される中で、水際対策を緩めるのは困難との判断に傾いた。感染収束後のインバウンド需要に期待する観光業や飲食業などにとっては、深刻な事態になりそうだ。
菅義偉政権は東京五輪・パラリンピックの開催でコロナ禍からの回復を世界にアピールするとともに、景気浮揚への起爆剤としてインバウンド需要を取り込む狙いだった。だがここにきて、感染状況の改善ペースが顕著に鈍り、変異種による感染拡大のリスクも高まっていることから、海外からの観客受け入れに対して、見送り論が急速に強まった。
このうち変異ウイルスについては政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長も、10日の衆院厚生労働委員会で「(日本でも)早晩、主流になる」と述べ、監視体制の強化が必要だとの認識を示した。こうしたことも踏まえて政府や東京都、大会組織委員会などによる5者協議を来週開き、見送りを確認する方向で調整が進むとみられる。
受け入れを断念した場合の経済損失を、野村総合研究所エグゼクティブ・エコノミストの木内登英氏は、チケット販売収入などの合計で2000億円弱と試算する。このうち1500億円余りが宿泊費や飲食費、交通費などだ。総額は年間の国内総生産(GDP)の0・03%程度と「日本の景気動向を大きく左右するほどの規模ではないが、相応の経済損失額であることは確かだ」と警鐘を鳴らす。
緊急事態宣言の再発出で大きな影響を受けた飲食業や観光業の収益回復が、期待していたインバウンド需要の消失で見込めなくなれば、廃業に踏み切る事業者が増え、雇用情勢の悪化につながる可能性がある。東京商工リサーチによると、20年は企業の休廃業や解散が4万9698件と前年比14・6%増え、00年に調査を始めてからの最多を更新した。
第一生命経済研究所首席エコノミストの熊野英生氏は「将来を悲観した『あきらめ型』の廃業が多い」と分析する。海外客の受け入れ断念で、こうした傾向に拍車がかかる事態が懸念される。