新型コロナの流行から1年。専門家に聞く感染拡大の「過去・現在・未来」
国立国際医療研究センター国際感染症対策室医長・忽那賢志氏
国立国際医療研究センターの国際感染症対策室医長として、新型コロナ感染症の診療に携わっている忽那賢志感染症専門医に、この1年間を振り返ってもらうとともに、現状の感染状況とその原因などについて聞いた。
―新型コロナの感染が国内で確認されてからまもなく1年。何がわかり、何が課題だとみていますか。
「症状のないうちから感染性があることがわかり、屋内や人との距離が保てない環境ではすべての人がマスクを着用する『ユニバーサルマスク』の概念が定着してきた。“第1波”の時に比べ、今は死亡する割合は減っている。抗炎症薬『デキサメタゾン』などの治療薬の有効性が確認できたことが関係している。ワクチンの副反応は許容範囲と考える。効果の持続性については今後検証が必要だ」
―足元の感染急拡大の原因は。
「人と人との接触が減っていないことが一番の原因だろう。人々は感染対策の仕方はわかっていても順守しきれない状況といえる。当センターの入院患者の大半は会食で感染したと思われる。会食で広がっていることは間違いない」
―英国や南アフリカなどで変異種が拡大しています。
「現状、国内では英国や南アに渡航歴のある人やその家族などから見つかっているが、変異種が国内で広がっているという情報はない。ただ、英国でかなり拡大しており、世界中に広がると日本への侵入を防ぐのはだんだん難しくなる」
―東京五輪・パラリンピックについては。
「現状では無観客開催が望ましいのではないか。入国した選手を2週間以上隔離しPCR検査を行うなど感染のリスクを極力減らした形での開催はできなくはない」(山谷逸平)
*取材はオンラインで実施。写真は国立国際医療研究センター提供
日刊工業新聞2020年1月15日