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日立が知財に取り組んで100年、「競争と協創」で社会のために

日立が知財に取り組んで100年、「競争と協創」で社会のために

日立製作所の東原敏昭社長

「競争」と「協創」使い分け

日立製作所は「IP for society」(社会のための知財)を掲げ、社会課題の解決に貢献する知財戦略を推進している。他社との競争、顧客との協創の観点から知財を使い分け、時代やビジネスに合った知財活動に取り組む。知財対象もデータや情報まで拡大させ、「デジタル新時代に求められる知財を創る」(戸田裕二知的財産本部本部長)ことを目指す。(石川雅基)

日立の知財戦略は時代に応じて柔軟に対応してきた。2000年代に主力のエレクトロニクス製品が不振となり、業績が急激に悪化した。この時、エレクトロニクスの量産品から「社会イノベーション事業」への転換に会社の舵(かじ)が切られたことで、知財活動にも大きな変化があった。

戸田本部長は「社会イノベーション事業は単独で事業ができないため、ビジネスモデルの保護、オープンイノベーションへの対応などが求められる。そのため知財活動も変革した」と振り返る。社会イノベーション事業で取り組むのが競争戦略(プロダクト事業)と協創戦略(デジタルソリューション事業)の二つの知財活動だ。

技術的に優れた機器やシステムを提供するプロダクト事業では競争力を強化するため、製品や事業ごとに知財マスタープラン(IPランドスケープ)を作成している。特許ライセンス契約を前提としないため、結ばない場合も多い。差別化や参入障壁とするために知財を活用している。

一方、顧客とソリューションを創出するデジタルソリューション事業ではパートナーシップの促進やエコシステム構築などの協創に知財を活用する。知財の対象を従来よりも広げ、特許権、著作権などだけでなく情報、データも含めている。戸田本部長は「他社に先駆けてデータを含む広義の知財に着目した。ユースケースやソリューションコアをIoT(モノのインターネット)共通基盤の『ルマーダ』に蓄積し、スケールできないか検討している」と話す。

現在、国連の持続可能な開発目標(SDGs)やソサエティー5・0など社会課題の解決に貢献するデジタル新時代の知財戦略にも取り組み、本質的な課題を解決するソリューションを生み出すために知財を活用している。「知財でグローバルエコシステムを形成し、社会イノベーションを実現する。そのために大学、国際標準化機関、国連機関などとの連携を進めている」(戸田本部長)という。

知財はクローズドにする守りの知財戦略と市場の発展のためにオープンにする攻めの知財戦略の二つに分類できる。戸田本部長は「未来社会をデザインするために公共性の高い分野は早い段階から知財のオープン化を宣言し、社会規範の維持・進化につながる知財を提供してきた。優れた技術・製品を開発し、社会に貢献するという企業理念にも通じる」と強調する。

世界知的所有権機関(WIPO)で日立の知財活動について講演する戸田本部長(右)(日立提供)

21年に日立が知財に取り組み始めて100年を迎える。「環境やエネルギーなどの分野に知財をさらに活用したい。多様な製品やソリューションを展開してきた日立だからこそできる知財活動がある」(同)と意気込む。

日刊工業新聞2020年3月1日

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