「巣ごもり」が電機大手の業績押し上げる、軒並み上方修正でコロナ前の成長路線へ
新型コロナウイルス感染拡大による巣ごもり需要が電機大手の業績を押し上げる。ゲームや音楽、テレビが好調なソニーを筆頭に、白物家電が強いパナソニックや三菱電機も追い風を受ける。巣ごもり以外にも2020年前半に冷え込んだ自動車市場が急回復するなど、各社はコロナ前の成長路線へ戻りつつある。
子会社の不適切会計で決算発表を延期したシャープを除く電機大手7社のうち5社が21年3月期連結業績予想の営業利益を上方修正した。コロナ禍の外出自粛による在宅時間増加を背景にした巣ごもり需要が主要因となる。ソニーは家庭用ゲームソフトウエアや定額のゲーム配信サービスなどの好調なゲーム事業が業績をけん引する。また、長年課題だったテレビ事業が巣ごもり需要に、構造改革効果も相まって収益拡大に貢献する。
パナソニックも日本でのテレビ販売が伸びているほか、洗濯機や冷蔵庫、調理家電が国内外で堅調に推移する。三菱電機は日欧米で家庭用エアコンが好調で、コロナ禍の長時間在宅により住環境の改善ニーズが急速に高まっているようだ。
日立製作所はニューノーマル(新常態)やコロナ禍で加速するデジタル変革(DX)需要を取り込み、稼ぎ頭のIT部門が高収益を維持する。一方で、東芝は外出自粛のマイナス影響として、オフィス複合機や販売時点情報管理(POS)システムの需要減に苦しんでいる。
自動車向けをはじめ広範な半導体不足は各社の新たな事業リスクになる。テレビ需要拡大による液晶パネルなどの需給逼迫(ひっぱく)も今後の懸念材料だ。ただ、同じく需給のタイトなパワー半導体を手がける三菱電機や東芝にとっては製品値上げを含む利益改善の好機となりそうだ。
日刊工業新聞2021年2月16日