低コスト&感染防止! 新生銀行が取り組むシェアオフィス活用の“無人拠点”
リモートで資産運用相談、店舗網カバー期待
【低コストで開設】新生銀行が個人顧客に対し、店舗以外の営業拠点の設置・活用に取り組み始めた。シェアオフィスの個室ブースを活用したもので、人員を配置しない無人拠点だ。顧客に来てもらい、リモートで資産運用について相談を受け付ける。店舗より低コストで開設できる上、非対面なので新型コロナウイルス感染防止策にもなる。店舗に次ぐ第2の営業拠点として普及・定着を狙う。
東京・京橋駅直結の複合ビル「東京スクエアガーデン」の14階。シェアオフィスの代表格ウィーワークの施設内に新たな営業拠点がある。新生銀はウィーワークジャパン(東京都港区)と業務提携して個室ブースを確保、1月に無人拠点として開設した。清水哲朗常務執行役員個人ビジネスユニット長は「今後のリテール戦略で非常に大きい」と、意義を強調する。
顧客は個室ブースに入り、ビデオ会議システムを通じて別の場所にいる担当者と資産運用について相談する。ブースにはタブレット端末を配置。今後は口座開設、振り込みなどの手続きを端末でできるようにする。
銀行にとって店舗は顧客との重要な接点である反面、一定の人員を配置し、建物を維持・管理するコストがかかる。それに対し、無人拠点はコストを大幅に抑えられる。
【地方開設も視野】新生銀の店舗数は24店で、メガバンクなどに比べると少ない。2020年7月に仙台と広島の店舗を閉鎖するなど地方は特に少ない。そのため無人拠点には店舗網をカバーする役割が期待される。
京橋を含め21年度に計4―5カ所の拠点をウィーワークの施設内に開設する計画だ。地方での開設も視野に入れている。顧客の反応を確認し、本格展開するか検討する。工藤英之社長は「利便性を圧倒的に向上できる」と意気込む。地方で無人拠点を増やせば、店舗がない地域で顧客を開拓できる。店舗を閉鎖した仙台や広島に開設すれば、顧客をフォローできる。
無人拠点は新生銀の働き方改革にも寄与する。資産運用の担当者はリモート機能を生かし、どこにいても顧客の相談に対応できる。オフィスにこだわらず、自宅からでもよいため、テレワークの普及につながる。無人拠点の数が増え、リモート相談の実績が積み上がれば、それだけ効果は大きくなる。新生銀は以前からテレワークを活用してきたが、新型コロナの感染拡大で社員に積極的な利用を促してきた。無人拠点はその流れを加速する先導役になりそうだ。
【業務効率化】店舗でもリモート活用を進めている。ビデオ会議システムを通じて口座開設や振り込みをタブレット端末で手続きできるサービスは、店舗では20年11月に導入済みだ。
リモート活用は顧客の利便性はもちろん、新生銀にも利点が大きい。店舗でのリモート活用は店舗の人員など業務効率化につながる。無人拠点が拡大すれば、店舗数の少なさをカバーできる。これらの成果をどれだけ出すことができるか。今後の行方に注目が集まりそうだ。(戸村智幸)