人材確保が急務のIT業界、TISは健康支援で働きがいのある会社をつくる
満足度高め優秀人材確保
TISは2020年まで3年間の中期経営計画の重点施策の一つに、働き方改革と健康経営の推進を掲げてきた。コロナ禍でテレワーク中心となる中、オンラインでエクササイズ動画を配信するなど社員の心身の健康を支援する。働きがいのある会社づくりを通して、社員の満足度向上や優秀な人材の獲得につなげたい考えだ。(狐塚真子)
人材の流動性が激しいIT業界では、優秀な人材の確保が喫緊の課題となっている。「IT業界は人材なくして成り立たない。社員全員が主役となって活躍できる環境を整備するためには、働きがいのある会社であることが必須だ」。働き方改革推進室の細谷悦子室長は改革の重要性をこう話す。
TISは18年以降、「働き方改革推進室」を中心に、テレワークの利用場面拡大やコアタイムのない「スーパーフレックス」といった勤務形態の変革を実行してきた。育児や介護、病気の治療で療養が必要な社員の離職を減らすのが目的で、育児・介護休暇制度の拡充や時短制度も導入した。さらに70歳まで定年前と変わらない処遇の「再雇用制度」を設けるなど柔軟な働き方をいち早く取り入れ、多様な人材が活躍できる体制を整えてきた。
健康経営の推進に向けては、桑野徹会長兼社長を最高健康責任者(CHO)とした体制を整備し、健康保険組合と連携を取りながら施策を実行してきた。
19年度からは「勤務間インターバル制度」を導入。仕事終了後から翌日の仕事開始時間まで11時間以上を確保することで、健康維持や集中力の向上が期待できる。このほか、マラソン大会などの社内行事に参加した社員にはポイントを付与し、検診や人間ドックの費用の補助や、健康増進につながるアイテムと交換できる仕組みも取り入れた。
社員の健康に関する知識向上を目指し、情報発信も積極的に行っている。役職者向けには、社員のメンタルヘルス対策やハラスメント防止に向けた集合研修の受講を必須とし、風通しのよい組織づくりを目指している。
全社員を対象とした健康情報に関するセミナーも多数実施している。食生活の改善や睡眠、マインドフルネスなどをテーマとし、年間20回ほど実施してきた。コロナ禍では感染症予防やテレワーク環境の整備、肩こり・腰痛対策などの動画をオンラインで配信。テレワークが基本となり、社員同士のコミュニケーション不足を懸念する声も上がる中、「動画をきっかけに部署内での交流が生まれることも期待している」(細谷室長)。
21年度以降は「社内外での多様な経験を通して、一人ひとりが成長できるような環境づくりを目指していく」(同)という。多様な働き方を実践・確立していくため、20年には社員数人が和歌山県でワーケーションを試験的に実施した。今後は農業体験など地域内での交流や社会貢献を通じて自己の成長を実現できるよう、さまざまな施策に取り組んでいく方針だ。