JAXAにも納入実績、中小企業が「宇宙」を目指す開発体制を教えて!
小野電機製作所(東京都品川区)は、宇宙、海洋、災害救助といった分野の研究用ロボットや宇宙関連の実験装置などの設計・開発から機械加工、組み立てまで一貫して手がける。宇宙航空研究開発機構(JAXA)をはじめ、多数の大学や研究機関への納入実績を持つ。人材育成や開発体制の強みについて小野社長に聞いた。(南東京・増田晴香)
―設計から加工、組み立てまで一貫して取り組んでいます。
「当社は少人数ながら機構設計や組み立て・調整を行う技術部門と機械加工担当の製造部門を持ち、(顧客が書いた)ポンチ絵をもとに相談が可能だ。両部門が連携し設計段階から製造部門の声を反映しており、コストを抑えたり効率的に加工したりできる設計を提案している。制御設計に関しては社内で対応が難しいものは外注に出す。今後は専門人材を採用し、全て社内でできるようにしたい」
―多能工の育成にも力を入れています。
「技術者は専門職化する傾向にあるが、受注内容によって業務負担に偏りが出るため、社員全員が専門の職務以外もできるような体制をつくる。これにより生産性向上につなげる。3―6カ月程度の期間を設け、各工作機械を扱うベテランがオン・ザ・ジョブ・トレーニング(OJT)で指導する。当社では汎用機から同時5軸で複雑形状も加工できる最新鋭の複合加工機までそろえており、臨機応変に対応している」
―最近、どんな開発事例がありますか。
「慶応義塾大学との共同研究により自社製品として研究開発用マスター・スレーブ操作型ロボットアームを開発している。高精度な力触覚の伝達技術でスレーブ側が対象物に触れた際、マスター側にも接触した感覚を繊細に伝えるロボットだ。若手社員が主体となって開発に関わっており、スキルアップやモチベーション向上につながると期待している」
―今後の事業方針を教えて下さい。
「基幹事業のほか、マスター・スレーブロボットのような自社開発事業や、BツーC(対消費者)事業を新たな柱として育てていく。BツーC事業ではデザイン経営を取り入れて企業のブランド力向上に取り組みたい」
ポイント/能力発揮できる環境設備
JAXAから設計・製造を受託したマルチクローラー探査ロボット「健気(けなげ)」など数々の受託製作を経験し、最先端の研究開発を支えてきた。また、医療従事者の要望で開発した医療機器の固定具「ガイドストッパー装置」などの特許技術も持つ。高度な技術力を保持するため「企業に発展と成長をもたらすのは人の力」という理念のもと、社員のスキルアップの機会創出や能力が発揮できる労働環境の整備に積極的に取り組む。