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モーターショーから見えてきた自動車部品の未来予想図

10年後、20年後の車と人、社会のつながりの変化に新提案相次ぐ
モーターショーから見えてきた自動車部品の未来予想図

豊田合成が参考出品したエアバッグカー「フレスビー」


軽量化へCFRP活用


 運転支援システムの搭載など高機能化が進む自動車。それにつれて搭載する部品点数が増える傾向にあり、環境配慮や燃費改善のためにも軽量化が課題となっている。

 KYBはストラット式ショックアブソーバー(SA)の外筒を金属から樹脂に置き換える技術を提案する。普通乗用車向けのSAの場合、一般的に質量が4キロ―5キログラムあり、そのうち約半分を鉄製の外筒が占める。同社がモーターショーに出品した「樹脂製ストラット」は鉄の代わりに炭素繊維強化熱可塑性プラスチック(CFRTP)を使用。強度と剛性を確保しつつ、鉄製の外筒と比べて30%程度軽量化した。ニッパツは炭素繊維強化プラスチック(CFRP)製のコイルバネを開発。高級車の領域を中心に技術の提案を始めている。
 
 一方、ヨロズはサスペンション部品のリアトーションビームで軽量化やコスト削減につながる技術を披露した。中央に位置する構成部品のクロスビーム内側にプレートを溶接。従来はパイプのようなロールバーを設置してねじれへの剛性を確保していたが、プレートに置き換えることでバーを不要にした。これまで外注していたバーを内製するプレートに代替することでコストも削減できる。またクロスビームはこれまで板材を加工していたが、パイプ材をプレス成形した後に焼き入れをして剛性を高める技術も開発した。

 タチエスは人間工学に基づき身体を支える上で不要な着座面をできる限りそぎ落としたシートを参考出展。背中の腰の辺りの着座面を縮小してスリムなシート構造にした。

 トヨタ紡織トヨタ自動車の新型ハイブリッド車(HV)「プリウス」に搭載するシートを展示している。11月1日付でアイシン精機とシロキ工業からトヨタ向けのシート骨格機構部品事業の移管が決まっていたため、3社で共同開発した。鋼板の材料見直しや薄板化によりシート全体で15%程度軽量にした。

 住友理工は世界シェア首位の自動車用防振ゴムで一部に樹脂を採用した製品や、独自のウレタン配合技術で開発したウレタンパッド材料により従来比約3割軽量化したヘッドレストを出展。従来品との持ち比べで重さの違いを体感させている。

 豊田合成は高級車などの窓枠に使われる金属部分を樹脂と光沢のあるフィルムに置き換えた「光輝フィルムアウターウェザストリップ」をPR。光輝フィルムと樹脂を一発押し出し成形する技術を用い、金属同等の高級感を保ちながら軽量化につながる製品として訴求する。

日刊工業新聞2015年11月02/03/04日 自動車面
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
ちょうどモーターショー開催時期にタカタ問題で進展があったが、かえってクルマ作りにおける部品メーカーの重要性を再認識させられた。今後は機械系部品にもエレクトロニクス技術やITがさらに入り込んで、機能が複雑になり部品メーカーの技術が、ブラックボックス化されることも多くなるだろう。タカタの例でも分かるように、それは自動車業界にリスクにもなりうる。完成車メーカーと部品メーカーはどこまで情報を共有し、信頼を醸成していくか。その関係性も変わっていかざるを得ない。

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