モーターショーから見えてきた自動車部品の未来予想図
10年後、20年後の車と人、社会のつながりの変化に新提案相次ぐ
「世界一のテクノロジーモーターショー」を目指す「東京モーターショー」。第44回の今回は自動運転機能、次世代の電動技術などを備えた多彩な車が会場を彩っている。車の進化に欠かせないのが部品メーカーの存在だ。車の発展を支える部品メーカーの新たな提案を追う。
2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催を契機に、10年後、20年後の車と人、社会のつながりは大きく変わると予想される。モーターショーでは、そうした「未来のクルマ」に向けた技術提案を部品メーカーが行っている。
豊田合成が参考出品したエアバッグカー「フレスビー」は、30年ごろの超小型車を想定したコンセプトカー。エアバッグメーカーからの提案として、ボディーと一体化した緑色の素材が歩行者との衝突時に膨らんで衝撃を緩和するのが特徴だ。高速走行時はボディー形状が変化し、空気抵抗を減らして燃費を改善させることも想定する。
発光ダイオード(LED)の光源を手がける強みを生かし、LEDの光をボディーに映し出して進行方向を表示するなど、外部とのコミュニケーション機能を盛り込んでいるのもこだわり。あくまでデザインコンセプトモデルのためドアはなく、人は乗り込めないが、15年後の未来を期待させる。
東海理化は近未来に実用化されるであろうジェスチャー操作などを披露している。渋滞時にカーナビゲーションのルート変更など「クルマから提案する時代がくる」(説明員)ことを想定。ハンドルを握ったまま左手の指を伸ばした本数で、「YES」と「NO」の入力を判別する。スイッチを探して押す動作を代替し、安全性も高まる。
テイ・エステックは人の感情を理解し、状況に応じて姿勢や向きを変える「アンビエントシート」を参考出品。20年代の高速道路での自動運転を想定したデモを披露している。
脳波を基にドライバーの集中度やリラックス度を測定。運転操作から解放された際には、シートの背もたれが倒れてゆったりと過ごせる「リラックスモード」に変化する。同乗者との会話を楽しみたい時には、お互いの顔が見やすい位置にシートが回転する「コミュニケーションモード」に移行する。
若手社員の研究会から生まれた同シート。同社の井上満夫社長は「感情を理解することで車のシートをより身近な存在として感じてもらえる」と話す。現在はへッドセットを頭に装着し脳波を測定しているが、「将来はシート自体で測定できる技術の確立を目指す」(井上社長)考えだ。
自動運転技術の導入が進んだ将来、自動車の安全部品の一つであるランプの技術も大きく進歩しそうだ。東京モーターショーでは、小糸製作所が次世代の照明技術「ハイレゾビュー」を参考出品している。照明と、歩行者や障害物など周囲の環境を監視するセンサーを統合。光源には高出力レーザーを使用し、光ファイバーを介して、照らしたい場所を適切な光で照らすことを可能にする。
例えば前方に歩行者を検知した場合、運転者に見やすい色の光でスポット的に照射。夜間の雨天時には、雨粒による光の乱反射を防ぐ機能が作動する。
車体や路面に映像や記号を表示することも可能。交差点に近づいた際に「ターン・レフト」という文字を車体に表示し、左に曲がることを歩行者に分かりやすく伝えるといった用途を想定している。小糸製作所の担当者は自動車用照明の将来について「単に明るく、歩行者や障害物が認識できればいいという時代ではなくなる。自動運転システムと連動し、周辺環境に応じた照射が必要になる」と語る。車体や路面にも映像や記号を表示することで「歩行者とのより直感的なコミュニケーションが可能になり、安全性の向上につながる」(担当者)とみる。
一方、ミツバは進路変更時や交差点で曲がる際にドアミラーの鏡が変形する「曲率可変ドアミラー」を開発した。鏡を部分的に曲面にすることで、視野角を25度から45度に拡大。運転手から見にくい斜め後方の死角を解消する。
曲率可変ドアミラーは必要に応じて鏡が曲がるのが長所。ウインカーと連動して変形させることを想定している。最初から端部を曲げた部分曲面鏡はすでに実用化されているが、端部がゆがんで見えるため、平面鏡に慣れた運転者の場合は違和感を覚えることもある。曲率可変ドアミラーは通常時は平面鏡で、必要なときだけ部分曲面鏡に変化するため、違和感も最小限で済む。
ミツバの担当者は「運転支援の一環で、カメラなどを使って死角を解消する技術が進んでいるが、高価なのがネック。まだミラーにもできることがある」と話す。課題は法規制への対応。部分曲面鏡自体は問題がないが、「運転の途中で鏡を曲げる出品物のような機能は現時点では認められない」(担当者)という。カーメーカーとともに規制緩和を働きかけていきたい考えだ。
2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催を契機に、10年後、20年後の車と人、社会のつながりは大きく変わると予想される。モーターショーでは、そうした「未来のクルマ」に向けた技術提案を部品メーカーが行っている。
豊田合成が参考出品したエアバッグカー「フレスビー」は、30年ごろの超小型車を想定したコンセプトカー。エアバッグメーカーからの提案として、ボディーと一体化した緑色の素材が歩行者との衝突時に膨らんで衝撃を緩和するのが特徴だ。高速走行時はボディー形状が変化し、空気抵抗を減らして燃費を改善させることも想定する。
発光ダイオード(LED)の光源を手がける強みを生かし、LEDの光をボディーに映し出して進行方向を表示するなど、外部とのコミュニケーション機能を盛り込んでいるのもこだわり。あくまでデザインコンセプトモデルのためドアはなく、人は乗り込めないが、15年後の未来を期待させる。
東海理化は近未来に実用化されるであろうジェスチャー操作などを披露している。渋滞時にカーナビゲーションのルート変更など「クルマから提案する時代がくる」(説明員)ことを想定。ハンドルを握ったまま左手の指を伸ばした本数で、「YES」と「NO」の入力を判別する。スイッチを探して押す動作を代替し、安全性も高まる。
運転手の感情を理解するシート
テイ・エステックは人の感情を理解し、状況に応じて姿勢や向きを変える「アンビエントシート」を参考出品。20年代の高速道路での自動運転を想定したデモを披露している。
脳波を基にドライバーの集中度やリラックス度を測定。運転操作から解放された際には、シートの背もたれが倒れてゆったりと過ごせる「リラックスモード」に変化する。同乗者との会話を楽しみたい時には、お互いの顔が見やすい位置にシートが回転する「コミュニケーションモード」に移行する。
若手社員の研究会から生まれた同シート。同社の井上満夫社長は「感情を理解することで車のシートをより身近な存在として感じてもらえる」と話す。現在はへッドセットを頭に装着し脳波を測定しているが、「将来はシート自体で測定できる技術の確立を目指す」(井上社長)考えだ。
自動運転見据える
自動運転技術の導入が進んだ将来、自動車の安全部品の一つであるランプの技術も大きく進歩しそうだ。東京モーターショーでは、小糸製作所が次世代の照明技術「ハイレゾビュー」を参考出品している。照明と、歩行者や障害物など周囲の環境を監視するセンサーを統合。光源には高出力レーザーを使用し、光ファイバーを介して、照らしたい場所を適切な光で照らすことを可能にする。
例えば前方に歩行者を検知した場合、運転者に見やすい色の光でスポット的に照射。夜間の雨天時には、雨粒による光の乱反射を防ぐ機能が作動する。
車体や路面に映像や記号を表示することも可能。交差点に近づいた際に「ターン・レフト」という文字を車体に表示し、左に曲がることを歩行者に分かりやすく伝えるといった用途を想定している。小糸製作所の担当者は自動車用照明の将来について「単に明るく、歩行者や障害物が認識できればいいという時代ではなくなる。自動運転システムと連動し、周辺環境に応じた照射が必要になる」と語る。車体や路面にも映像や記号を表示することで「歩行者とのより直感的なコミュニケーションが可能になり、安全性の向上につながる」(担当者)とみる。
一方、ミツバは進路変更時や交差点で曲がる際にドアミラーの鏡が変形する「曲率可変ドアミラー」を開発した。鏡を部分的に曲面にすることで、視野角を25度から45度に拡大。運転手から見にくい斜め後方の死角を解消する。
曲率可変ドアミラーは必要に応じて鏡が曲がるのが長所。ウインカーと連動して変形させることを想定している。最初から端部を曲げた部分曲面鏡はすでに実用化されているが、端部がゆがんで見えるため、平面鏡に慣れた運転者の場合は違和感を覚えることもある。曲率可変ドアミラーは通常時は平面鏡で、必要なときだけ部分曲面鏡に変化するため、違和感も最小限で済む。
ミツバの担当者は「運転支援の一環で、カメラなどを使って死角を解消する技術が進んでいるが、高価なのがネック。まだミラーにもできることがある」と話す。課題は法規制への対応。部分曲面鏡自体は問題がないが、「運転の途中で鏡を曲げる出品物のような機能は現時点では認められない」(担当者)という。カーメーカーとともに規制緩和を働きかけていきたい考えだ。
日刊工業新聞2015年11月02/03/04日 自動車面