地方国立大の定員増、破壊的な改革もいとわない1―2校に限られる
地方国立大学の定員増が話題になっている。ただ対象は破壊的な改革もいとわない1―2校に限られそうだ。政府の狙いは改革の先導役の成果を踏まえ、公私立を交えた大学・地域連携による地方創生にある。地域で「選ばれる大学」の役割とは何か。各大学は生き残りをかけ考えてもらいたい。
内閣府のまち・ひと・しごと創生本部の検討会議は、地方創生をミッションとする地方大学(1都3県以外)改革の議論を2020年末にとりまとめた。モデルとなる地方国立大学には、学部学科の解体や踏み込んだ教職員評価など痛みを伴う改革を断行する一方で、改革のインセンティブとして定員増や自由度の高い予算支援も認める。
国立大の中には、文部科学省が世界と競争する研究重視の国立大を集中的に支援する「指定国立大学」制度がある。
同本部が掲げるのは“指定地方国立大学”というべき存在だ。突出した大学を選び、改革を後押しする。これを受けて文科省は定員増の要件の検討に入った。最短で22年度から可能になる見込み。
これまで文科省は、18歳人口が減る中、定員割れの私立大学の経営をさらに圧迫しないよう、国立大の定員増を認めていなかった。日本私立大学協会は、同本部の方針について「慎重な議論が必要」と懸念を表明している。
ただ、今回の取り組みは特例的に認められるものだ。地域の高度人材育成は公私立大にとっても重要なテーマ。定員増を認められた国立大が“我が道を行く”存在ではなく、国公私立の設置形態を超えて地域の高等教育を議論する中での、革新的なリーダーとなる必要がある。
地域の進学・就職率や産業ニーズなどから、中長期の計画を策定する「地域連携プラットフォーム」や、多様な機関が単位互換など密接に関わる「大学等連携推進法人」といった新たな仕組みを活用することも期待される。地方創生という大きな目的に向け、各機関が連携して相乗効果を出す方策を考えていくべきだ。
関連記事:学部解体の断行も、地方国立大学は破壊的改革へ