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キリンHDが覚悟の事業モデル組み替え。「酒類は減り続けてる。ヘルスサイエンスに踏み込む」

キリンホールディングス社長・磯崎功典氏インタビュー
キリンHDが覚悟の事業モデル組み替え。「酒類は減り続けてる。ヘルスサイエンスに踏み込む」

同社公式サイトより

―2020年は新型コロナウイルス感染拡大により、ビール業界は大きな影響を受けました。

「新型コロナウイルスの影響がなければもっと良かったが、ブランドを大切にし、機能性や価格を重視して家庭用に力を入れてきた結果、思ったほど大きなマイナスにはならなかった。ただ、業務用は非常に厳しく、苦しんだ1年で、期初の目標には届いていないが、最大限の経営努力で健闘したと言える」

―21年も緊急事態宣言が再発出され、ビール市場は厳しい状況が続くことが予想されます。

「うまくいけばいいが、新型コロナウイルスが収束しても新たなウイルスが流行する可能性もあり、経営者としては最悪のシナリオを考えている。業績は戻ったとしても7―8割ではないかと思う。在宅勤務が続けば、地方への移住も増え、会食や宴会はどうしても減る。ニューノーマルの社会の変化を覚悟して、ビジネスモデルの組み替えをする必要がある」

―どのようにビジネスモデルを組み替えますか。

「酒類市場はコロナに関係なく、これまでも減り続けていて、今後も下がる状態が続く。だが、企業は持続的に成長していかなければならない。酒類事業も工夫をして、きちんとやっていきながら、発酵バイオテクノロジーを生かしたヘルスサイエンス領域にさらに踏み込み、医薬品事業を強化していく」

キリンホールディングス社長・磯崎功典氏

―海外事業ではどこに注力しますか。

「ミャンマーは家庭向けの需要が伸びており、好調だ。さらに収益力を上げるため、ブランドの強化を図る。豪州はライオンの乳飲料事業の売却先が決まり、酒類事業に集中できる。海外事業は地政学上のリスクを最小化することが大事だ」

―コロナ禍で市場環境が激変する中、持続的成長のために必要なことは。

「ビール大手のベルギーアンハイザー・ブッシュ・インベブはノンアルコールの領域に入っている。逆にコカ・コーラは酒類に参入している。どこもコロナの影響を受け、経営のバランスを取ろうとしている。酒類、清涼飲料、ヘルスサイエンス、医薬とポートフォリオの分散は保険になる」

記者の目/「健康」が企業価値を左右

国内のビール類市場は16年連続で縮小するなど、厳しい経営環境にある。キリンは酒類事業に軸足を置きながら、ヘルスサイエンスや医薬品の事業に参入し、ポートフォリオの分散を進めてきた。新型コロナウイルス感染拡大で、健康への関心がますます高まる中、今後、これらの事業が企業価値を左右する可能性も秘めている。(高屋優理)

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