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新型コロナの試薬や検査装置で存在感発揮の島津、社長はノウハウの“コトづくり”を加速

上田輝久社長インタビュー
新型コロナの試薬や検査装置で存在感発揮の島津、社長はノウハウの“コトづくり”を加速

島津製作所・上田輝久社長

―2021年の注力分野は。

「一番は感染症対策。20年は新型コロナウイルス検査試薬やPCR検査装置を投入したが、全体のシステム化に取り組む。検査結果の自動伝達に加え、結果をデータベース化して感染源やどこにリスクがあるのかなどを解析できるものだ。3月までに展開したい。製品販売だけでなくノウハウも提供し“コトづくり”を加速する」

―事業部間の連携が感染症対策関連で力を発揮しています。

「20年度の業績見通しが厳しいことを期初に示し、社内で危機感を共有した。顧客の病院経営がコロナ禍で悪化し、医用機器事業は特に厳しいと伝え続けた。PCR検査装置は分析計測事業部が開発。“売れる、売れない”で議論はあったが、医用機器の営業は積極的で意気込みを感じた。実際、全国に代理店を持ち販売網が充実する分析計測事業部より、医用機器事業部の方が販売数が多い」

―ほかに事例は。

「半導体製造装置メーカー向けに、産業機械事業部で分析装置の提案も始めた。多様な製品、技術の提供で“島津に言えば何でもそろう”という状況を狙う。肺炎診断にも使う回診用エックス線(X線)撮影装置のネットワーク化による位置情報把握での運用効率化や、同装置の消毒作業に紫外線を使えないかなど、トリガー製品と周辺製品を全員が切磋琢磨(せっさたくま)し考えるようになった。連携がコロナ禍で動きだした」

―コロナ禍で各施策に変更はありますか。

「老朽オフィスのリノベーション計画などは、在宅勤務などを念頭に見直しを進めている。航空機器事業部で進めていた航空機製造・整備向け検査装置の新規事業は別部署に移管した。複合材の内部欠陥検出などで関心が強く、視野を広げる。在宅でうつ病、自殺者が増え、認知症も深刻だ。これまでヘルスケア関連は認知症やがん、うつ病、生活習慣病などの早期発見・治療に同時並行で取り組んできたが、社会課題の深刻度を鑑み、優先順位をつけていく」

記者の目/感染症プロ、主導力を発揮

上田輝久社長主導で20年春、感染症対策プロジェクトを立ち上げ、新型コロナの検査試薬や検査装置を迅速に開発。病気解明の取り組み、PCR検査センター設置支援をはじめ、一致団結でスピード感ある事業展開が際立った。15年の社長就任時から進めた事業部間連携のたまもので、総合力のさらなる発揮が期待できそうだ。(京都・松中康雄)

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