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「車載を含め、中国向け事業が飛び抜けて好調」。日本電産社長の強気の根拠

関潤社長インタビュー
「車載を含め、中国向け事業が飛び抜けて好調」。日本電産社長の強気の根拠

日本電産の関社長(左)と永守重信会長兼CEO

―2021年の事業環境と成長施策は。

「車載を含め、中国向け事業が飛び抜けて好調だ。特定地域に偏らない経営方針だが、家電・商業・産業用製品の中国への入り込みが足りない。携帯電話の振動モーターから、原子力発電所向けまで製品は幅広く、拡大余地は十分にある。中国は風力発電も積極的。関連モーターなども拡大できる」

―世界で脱炭素社会の動きが加速します。

「世界の発電電力の約半分をモーターが消費しており、高効率モーターで地球温暖化防止に貢献する。同モーターの供給拡大は仕込みが大事。過去2年間の業績停滞は、それ以前の仕込みの甘さが一因だ。商品競争力の向上で受注確度を高め、25年度売上高目標5兆円の達成につなげる」

―車載部品事業が成長ドライバーです。

「鉄道を見れば明白だが、エンジンと比べモーターは高効率で故障も少ない。電気自動車(EV)用トラクションモーターは、既存の車のエンジンと変速機の機能を併せ持ち、すでに同等性能で価格は3分の1。バッテリー価格も年々下がり、全固体電池など使わなくても既存のリチウムイオン二次電池でEVの値段は25年頃にハイブリッド車より安くなる。将来はガソリン車も下回る。そうすれば、ガソリン車を買えなかった所得層も購入可能になり、車の需要が一気に増える」

―車載事業の成長に向けたポイントは。

「当社の競合を商品力で突き放す。主要部品と生産設備の内製化でチャンスは必ずモノにする。あとは生産能力の上方弾力性。ハードディスクドライブ用モーターの競争で経験したが、伸び盛り商品で過剰能力を怖がると勝負にならない。25年までのシナリオを年内に固める」

日本電産の強みは

「スピード。会社は大きくなると用心深くなり決心にリソースをかける。当社は早い段階でエモーショナルに決める。必要なら会議を待たずタイムリーに必要材料20%でも決断する。材料がそろってから決めるなら経営者は不要。経営者の真骨頂は決めるべき時に決断すること。一方、多くの決裁事項で永守(重信会長)への依存度が高い。私や吉本(浩之副社長)がもっと成長しないといけない」

記者の目/中長期目標への布石を

ピンチに強い社風と、永守会長と関潤社長のツートップ体制が軌道に乗り、コロナ禍で業績をいち早く改善した。現在の20年度売上高目標は1兆5500億円。中期目標で掲げた20年度売上高2兆円達成は厳しいが、関社長は「22年度。できれば21年度に達成したい」とし、その先の25年度5兆円、30年度10兆円に向けた布石も着々と打つ。(京都・松中康雄)

【オンラインセミナー】注目の「全固体電池」は何を変えるのか?
日刊工業新聞2021年1月15日

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