4分で売り切れたクルマも!オンラインで高級車販売が好調、変わる利用者意識
新型コロナウイルス感染症の影響で、自動車の“売り方”や“使い方”が変化している。売り方では対面を避けオンラインを活用した商談や購入までを完結させるデジタル化の動きが加速。使い方では“密”を避けるパーソナル空間として自動車が注目されている。さらに買い物など近距離移動に適したカーシェアリングや駐車場シェアリングが会員数を伸ばした。今後もコロナ禍に合わせたサービス展開が進みそうだ。(鎌田正雄)
オンライン店活況
「半信半疑だったが、4分で売り切れた車もあり好調だ」。ビー・エム・ダブリュー(東京都千代田区)の京谷麻矢ブランド・コミュニケーション・マネージャーは、20年7月に開設した「BMWオンライン・ストア」の状況をこう話す。オンラインストアでは数百万―数千万円する限定車を販売する。コロナ禍で家にいて物を買うことが日常的になり、高級商材にも広がりをみせる。京谷マネージャーは「在宅勤務、外出できない動きは追い風」と歓迎する。
29日にはオンライン限定で、鍛金家で人間国宝の奥山峰石氏が車内装備の一部を手がけた限定車を2台発売する。オンラインならではの差別化を図ると同時に、通常車のオンライン販売も検討する。
トヨタ自動車は新車・中古車販売でオンラインの活用を強化している。新車購入の際に、消費者がオンラインで見積もりなどのやりとりができる「オンライン商談」は20年5月末の開始以降、20年11月末時点で販売店の約9割に当たる約250社が導入した。20年9月に開設した「トヨタ中古車オンラインストア」は20年12月22日時点での成約数は約100件に上る。どちらも新型コロナ拡大前から計画していたが、オンライン商談は「(通常より)受注までの時間が短い傾向にある。販売店での業務効率化や密を防ぐ動きにつながっている」(同社)という。
カーシェア、3密回避で会員数拡大
自動車の使い方では、密を防ぐ選択肢の一つとしてカーシェアが注目されている。パーク24グループのタイムズモビリティ(東京都品川区)が運営するカーシェア大手の「タイムズカーシェア」の会員数は、新型コロナ拡大前は月1万人程度の増加数だったが、20年4月に発令した緊急事態宣言解除後の8―10月は同2万人強の伸びを記録した。
パーク24の経営企画本部コーポレートコミュニケーション部PRチームの渡辺倫也チームリーダーは「非対面で車を借りる手続きが完了し、密を避けた移動が可能」とカーシェアのメリットを強調する。同社の調査(複数回答)では、緊急事態宣言中にカーシェア利用が増えた人のうち77%が「電車の代替手段として利用するため」と回答。次いでバスが37%、タクシーが19%と続いた。
20年11月に新しいサービスとして、法人向けに専用車両として利用が可能な「配車型カーシェアリング」も始めた。営業車などリース車両をカーシェアに切り替えることで経費削減に寄与する。
オリックス自動車(東京都港区)が運営する「オリックスカーシェア」は、昨年の緊急事態宣言後の会員登録数は「前年同月比で130%超の月もあった」(レンタカー本部カーシェアリング部中村健太郎部長)。公共交通機関の代替手段や買い物など近距離移動の手段としてのニーズが拡大。「7―9月の個人利用は前年同期比で2、3割増えている」(同)と個人利用がカーシェア全体の需要を押し上げている。
駐車場、通勤など日常使い増加
駐車場の利用にも変化がある。SOMPOホールディングスが出資する駐車場シェアリング大手のakippa(大阪市浪速区)は、1月5日時点の累計会員数は210万人、駐車場拠点数は4万1000カ所を突破した。19年12月時点では同会員数が160万人、同拠点数は3万2000カ所だった。新型コロナ拡大前と比べて、通勤や友人宅への訪問など日常的な利用が増えており「3密回避を意識して車移動が増えたことで、これまで以上にさまざまな場所での駐車場需要が増えている」(akippa)と分析する。
自動車販売のオンライン化やカーシェアは以前から動きはあったが、コロナ禍を機に大きく動きだした。“ニューノーマル”で定着させるには、老若男女に使いやすいアプリケーション(応用ソフト)や対面販売と同等レベルのサービスを提供するなど、きめ細かい対応がカギを握りそうだ。