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空飛ぶクルマの発着場「Vポート」への転用も!防災との両立でヘリポート導入進むか

空飛ぶクルマの発着場「Vポート」への転用も!防災との両立でヘリポート導入進むか

Vポートに転用可能なヘリポート(イメージ、エアロファシリティー提供)

「Vポート」に転用可能

ヘリポート事業などを手がけるエアロファシリティー(東京都港区、木下幹巳社長)は、実用化に向けて開発が進む空飛ぶクルマの発着場「Vポート」に転用可能なヘリポートを提案する。多くの高層ビル屋上には火災など緊急時にヘリコプターが発着できる緊急離着陸場がある。ただ、常時発着するヘリポートと異なり、Vポートに転用することは実質不可能だ。そこで防災とVポートの機能を両立させたヘリポートの実現を目指す。

【耐久性見直し】

木下社長は空飛ぶクルマが人口密集地の上空を飛ぶ社会が到来するまで30年かかるとみる。一方で「これから建てる高層ビルは100年使われる。建物は空飛ぶクルマの社会を迎える」と指摘する。

「赤プリ」の愛称で親しまれたグランドプリンスホテル赤坂の新館は2012年に解体された。超高層ビルとしては短命だが完成から約30年間使われた。こうした高層ビルにはビル火災などが発生した際、救助のため緊急離着陸場が設けるよう指導されている。

しかし、あくまでも緊急時のみの利用に限られ、普段ヘリコプターの離着陸は許可されない。加えてヘリコプターですら何度も離着陸する設計になっていない。木下社長は「航空写真で高層ビルの屋上にHやRのマークがあると空飛ぶクルマも活用できると思ってしまう。だが間違いだ」と指摘する。

Vポートとして使うには耐久性や遮音性、建屋からのアクセス性を見直す必要がある。ビルの屋上に施設を後付けするのは難しい。基本設計から組み込む必要がある。つまり将来、Vポートにも転用可能で、商業用や災害対応にも活用できる多用途なヘリポートだ。

【アクセス改善】

国立病院機構浜田医療センター(島根県浜田市)に設けた備蓄倉庫付きヘリポート(エアロファシリティー提供)

エアロファシリティーは防災備蓄倉庫付きヘリポートや、ドクターヘリの離着陸時にヘリポート下に引っ込むボンドエレベーターを提案する。通常、屋上には受電設備や空調機器が並ぶ。この上にアルミニウム製の床を張りヘリポートとするコンサルティングも行っている。こうしたノウハウを生かし、Vポート利用を見据えたヘリポートの要望にも応えていく構えだ。

多用途ヘリポートの参考となる例はある。19年11月に開業した複合施設型超高層ビルの渋谷スクランブルスクエア(東京都渋谷区)では緊急離着陸場付きの屋上を展望施設として開放した。新型コロナウイルスの影響もあったが、開業1年で約80万人が来場した。

ただ、高層ビルの多くに設けられた緊急離着陸場のほとんどは、直接つながるエレベーターがなくアクセス性はよくない。火災でパニックになった人たちが緊急離着陸場にたどり着くのは難しい。「理想からはほど遠い」(木下社長)。アクセス性の改善は緊急離着陸場として使うためにも必要だ。

また、木下社長は「Vポート下の空間は居住容積から控除するなど、設置に補助金を出さなくても政策で誘導することはできる」と指摘する。Vポート拡大には国の政策誘導が必要といえそうだ。(小寺貴之)

日刊工業新聞2020年12月28日

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