ジャパンディスプレイが鳥取工場を増強。中国から国内回帰へ
ジャパンディスプレイ(JDI)は車載用液晶ディスプレーを製造する鳥取工場(鳥取市)で、液晶パネルに偏光板などを取り付ける後工程設備を増強する。2021年3月めどに後工程の生産能力を現状比で約3割高める。新型コロナウイルス感染拡大により、中国一極集中のサプライチェーン(供給網)が一時寸断して生産に支障を来した。地産地消を目的に一部国内回帰を図る。
JDIは21年の年明けから鳥取工場で後工程の増設準備に入る。投資額は数十億円の見込み。鳥取工場はインスツルメントパネルのほか、センターインフォメーションディスプレー(CID)や後部座席向けモニターなどに使う車載用液晶ディスプレーの主力拠点。供給先は国内自動車大手が多いとみられる。
鳥取工場は液晶パネルを生産する前工程が中心で、偏光板やドライバーIC、バックライトなどを装着する後工程の大半は中国と台湾の製造子会社で行っていた。今回、中国に依存した供給網の多様化を目指し、鳥取に一部あった後工程設備の増強に踏み切る。
新型コロナだけでなく米中対立によるサプライチェーン分断などの地政学的リスクも回避するため、国内回帰で製品の安定供給を維持する戦略だ。
中国に過度に依存した供給網の弊害がコロナ禍により製造業全体で顕在化した。日産自動車は中国からの部品供給が滞り、2月以降で断続的に国内工場の一時停止を強いられた。キヤノンも3月に国内のデジタルカメラ工場の生産を休止した。パナソニックはノートパソコン製造に支障が出て、一部商品で在庫切れを起こした。
新型コロナの感染再拡大のほか、米国のバイデン次期大統領の対中姿勢が依然として不透明であり、供給網へのリスクは大きくなる一方だ。
日刊工業新聞2020年12月18日