竹中工務店が異業種との協業で狙う次世代の建築・まちづくり
竹中工務店はオープンイノベーションを加速する。研究開発の中核拠点、竹中技術研究所(千葉県印西市)のサテライト拠点「ラボ」を、2021年度にも東京に2拠点目を設け、大阪にも新設する。ラボでは大都市部でスタートアップや異業種の大企業との協業を積極的に推進する。ニーズが多様化する中で、次世代の建築やまちづくりなどに向けた高度なサービス提供を目指す。(編集委員・山下哲二)
新価値創造
今後、建築やまちづくりはデジタル化による各種ロボット、自動運転、システムの自動化による交通インフラなどの普及で、これに対応するハードの整備が不可欠になる見通し。また、新型コロナウイルス問題などの影響により生活様式の変化も予想される。
竹中工務店は19年、「新価値創造力の向上」を目指し、竹中技術研究所をリニューアル。新たに「竹中オープンラボ機構」として、三つの基幹組織「研究機関運営ラボ」「アクセラレーター運営ラボ」「大企業運営ラボ」の構築を進め、各ラボの連携と運用に取り組んでいる。
産学連携や積極的な異業種交流で、人工知能(AI)やIoT(モノのインターネット)などデジタル技術を活用した新たな建築やまちづくり向け事業を創出するのが狙い。一方、オープンイノベーションを通じて同研究所で開発した技術や製品を再検証しながら、より良い製品提供も目指す。
客観性取り入れ
さらに「大企業運営ラボ」のサテライト拠点として、大都市部に小規模「ラボ」の展開を始めた。社外から客観的な視点を取り入れ、製品、サービスに生かすことを目指す。
まず6月にラボの第1号拠点「大手町ラボ」を、大手町ビルのビジネスイノベーションスペース「インスパイアード ラボ」に設置した。同ラボは三菱地所とSAPジャパン(東京都千代田区)が運営し、2社が厳選したスタートアップに加え、自動車メーカー、石油・化学、製薬などの大企業が入居する。
竹中工務店は技術研究所所員を中心に、本社の経営企画、エンジニアリング担当者ら9人を派遣した。入居者はジーパンにTシャツなどの軽装。気楽な雰囲気の中で、同居するスタートアップの担当者と交流を通じて、課題の解決策とシーズの探索を始めた。
24時間開業
ラボは24時間365日開業。個室オフィスやカウンター形式のビジネススペース以外に会議室、ラウンジ、カフェレストラン、シンポジウムスペースで構成。3Dプリンター、工房、撮影スタジオなども備え、運営2社が伴走型で支援し、交流会や実証実験も行う。
大手町ラボでは「健康なまちづくり」「モビリティ革新まちづくり」をテーマに、「行動変容サービスの実証」「まちの評価実証」「屋内パーソナルモビリティ」の三つの課題を中心に取り組む。
竹中工務店の石黒武技術研究所技術戦略部長はラボの展開について「コアの建築技術の開発だけでなく、新規事業の創出やまちづくりなどステージの広がりも想定し、建設現場で活用できるAI、IoTなどの技術でスタートアップと協業したい」と力を込める。大手町ラボの成果を見極めた上で、大阪や都内で2拠点目となるラボを、ビジネスイノベーションスペース内に新設する方針だ。