東芝がパワー半導体に1000億円の大型投資!
東芝は2019―23年度の5年間でモーター制御などに使うパワー半導体の増産に約1000億円を投じる。23年度の生産能力は18年度末比で50%高まる。石川県能美市の既存工場を増設し、同社のパワー半導体としては初めて12インチウエハー対応の製造ラインも導入する。脱炭素社会の実現に向けて自動車や産業機器のさらなる省エネルギー化が不可欠で、積極投資により省エネのキーデバイス需要を取り込む。
東芝は製造子会社の加賀東芝エレクトロニクス(石川県能美市)中心にパワー半導体の生産能力を増強する。拡張したクリーンルーム内に8インチウエハーの製造設備を順次搬入する。20年度末から12インチウエハーのパイロットラインも導入し、試験生産を始める。
また、すでに一部生産委託している東芝グループのジャパンセミコンダクター(岩手県北上市)の大分工場(大分市松岡)でのパワー半導体生産拡大も増産計画に織り込む。ただ、東芝は台湾半導体大手の聯華電子(UMC)と大分工場などの売却に向けて交渉中であり、現在の増産計画は流動的な面が少なくない。今後大分工場などの売却が決まれば、代わりに加賀東芝で新棟を建設する可能性がある。
東芝のパワー半導体は300ボルト対応までの低耐圧の金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)に強みを持つ。モーター制御用途を中心に、電動化の進む自動車やFA機器のほかエアコンなどの家電製品に多く搭載される。同社推計によると、低耐圧MOSFETの国内シェアは31%と高いが、海外シェアは3%と低いため今後の成長余地は大きいと見る。
競合では世界最大手の独インフィニオン・テクノロジーズが12インチラインでの生産で先行し、オーストリアに21年稼働予定の新工場を建設中だ。三菱電機もシャープから福山事業所(広島県福山市)の一部を買い取り、パワー半導体工場を新設する。約200億円かけて21年11月の稼働開始を目指す。
富士経済(東京都中央区)の最新調査では、30年に世界のパワー半導体市場が19年比46・4%増の4兆2652億円に拡大する見通しだ。