自殺者急増、嗚咽に耳をそばだてる寄り添い役はどこに?
新型コロナウイルス感染症の流行が長期化する中で、自殺者が増加している。生活苦や先行き不安が理由とみられる。目立つのは非正規労働が多い女性の急増ぶり。
警察庁の調べによると、10月の自殺者数は2153人で、前年同月に比べ約4割増えた。2000人を超えたのは2018年3月以来のこと。6月までは前年同月比で減少傾向だったが、7月から4カ月連続で前年を大幅に上回った。
悩み事を抱えた人向けの相談窓口『よりそいホットライン』は、電話をかけてもつながりにくい状態が続く。相談内容は月を追うごとに深刻になっている。春先は感染への漠然とした不安が多かったが、夏ごろから収入減少や失業、生活苦、多重債務が増加する。
NPOのライフリンク(東京都千代田区)は自殺対策に取り組む。代表の清水康之さんは「制度につなぐことも含めて課題の具体的な解決が大事だが、寄り添い役ができる人材が不足している」と支援体制の強化を訴える。
1日当たりの感染者数が過去最多を更新し、第3波の到来が現実になった。自殺などコロナ関連死は感染死の数倍に及ぶかもしれない。社会からこぼれ落ちた人々の嗚咽(おえつ)に耳をそばだてなければ。