大手ゼネコンで進む“建設DX"、各社の違いは何だ?
ゼネコン大手でデジタル変革(DX)への取り組みが加速している。大成建設は近く全社横断的な組織「DX推進委員会」を本社内に新設し、新たに最高デジタル責任者(CDO)を配置する。大手ゼネコンでは、清水建設や大林組、鹿島もすでに社内横断組織を発足。竹中工務店は異業種との協業を進めることで、業務・テーマごとにデジタル化を推進している。
大成建設では、谷山二朗専務執行役員社長室長がCDOを兼務しDX推進委員会の委員長に就任。委員会の傘下に各部門を横断する作業部会を設置。各部門のIT担当責任者をはじめ、外部人材を登用した上で、デジタル技術を有効活用し、建設施工で効果的な課題解決に取り組む。
DX推進委は、6月に社長に就任した相川善郎氏の肝いりの組織。谷山氏がCDO兼CIO(最高情報責任者)に就任し、メンバー50人でスタート。課題ごとに必要な人員を配置し、段階的に組織を拡大する。同社が2021年4月にスタートする次期中期経営計画「中期経営計画(21―23年度)」では、DXを重要な経営課題の一つと位置づけ、会社全体で取り組む考えを盛り込む方針だ。
ゼネコン大手5社では、清水建設が19年4月に、今木繁行副社長をトップに各部門のIT担当責任者で構成する「デジタル戦略推進室」を設置。大林組も20年4月に「デジタル推進室」を立ち上げ、岡野英一郎執行役員が室長に就任した。鹿島は土木、建築、事務の各役員で構成する「デジタル戦略会議」を立ち上げている。
ただ、CDOの設置や外部人材の登用は、大手ゼネコンでは大成建設が初めてとなる。
一方、土木事業をグループ会社にもつ建築専業の竹中工務店は、全社的な組織を持たないが、NTTドコモなど異業種との協業で、テーマごとにデジタル化を推進している。建設業界では、少子高齢化による技能労働者不足や、働き方改革による残業規制の強化で、労働力不足が懸念されており、デジタルを活用した生産性向上が急務となっている。
19年後半から、それまで需要を牽引(けんいん)した東京五輪・パラリンピック関連工事が終え、予想を上回る民間投資の減退から建設業の受注競争が高まった。これに新型コロナウイルス問題が加わったことで、さらに受注環境に危機感が高まっている。
政府は働き方改革を推し進めるため、各建設生産プロセスで情報通信技術(ICT)などを活用する「i―construction」を推進している。