ニュースイッチ

【インタビュー】ノーベル賞受賞決定!ゲノム編集の今後と日本企業への期待

【インタビュー】ノーベル賞受賞決定!ゲノム編集の今後と日本企業への期待

ノーベル化学賞を受賞したシャルパンティエ博士(左)とダウドナ博士(2017年2月)

7日にスウェーデン王立科学アカデミーが発表した2020年のノーベル化学賞は、生物の遺伝子を自在に改変できる技術「ゲノム編集」で画期的な技術「クリスパーキャス9」を開発した、独・マックスプランク感染生物学研究所のエマニュエル・シャルパンティエ所長と、米カリフォルニア大バークリー校のジェニファー・ダウドナ教授に授与されることが決まった。日刊工業新聞社では2017年2月、科学技術分野の優れた功績に贈られる日本国際賞で、同年の受賞が決まった両氏にインタビューしており、それを再掲載する。両氏にクリスパー・キャス9への期待や企業との連携などについて聞いている。

ノーベル化学賞の受賞が決まったジェニファー・ダウドナ博士
―あらゆる分野にクリスパー・キャス9の活用が広がることで、10年後、20年後の我々の社会や生活がどう変わるとみていますか。

ダウドナ氏 この技術は動物や植物、我々人類の進化を大きく変える技術だ。医療分野では遺伝性疾患の治療への応用が進むだろう。農業分野でも栄養価の多い作物や、気候変動に適応する作物の開発が進む。今後10年を見通した場合、医療よりも農業分野に与える影響の方が大きいと考えている。「食」は人類共通のテーマであり、先進国だけでなく、あらゆる国で大きな可能性がある。

シャルパンティエ氏 クリスパー・キャス9がない時代には問題提起できなかったような生物学的課題に、若い研究者も取り組めるようになった。いろいろな実験用のモデル生物の作製もクリスパー・キャス9で進むことが予想され、今はとてもエキサイティングな時期にある。

―研究開発面で、今後、日本の研究機関や企業と連携していく考えはありますか。

ダウドナ氏 iPS細胞(人工多能性幹細胞)を開発した京都大学の山中伸弥教授とはぜひ協力していきたい。企業との連携については、例えばクリスパー・キャス9を使った病気の治療法を開発する場合、我々にはない資金力を企業は持っており、大変重要と考えている。

ノーベル化学賞の受賞が決まったエマニュエル・シャルパンティエ博士(2017年2月)

シャルパンティエ氏 日本でもクリスパー・キャス9を活用する企業がどんどん増えることで、技術の可能性もさらに広がると期待している。

―トランプ米大統領の科学技術に対する姿勢をどうみていますか。過去の共和党政権をみると、01年に就任したブッシュ大統領はES細胞(胚性幹細胞)の研究に後ろ向きでした。

ダウドナ氏 科学分野の大統領顧問がまだ決まっておらず、不確定要素が多い。気候変動に懐疑的なことなど懸念はある。この10年ほどを振り返ると、民主党政権よりも共和党政権の方が科学分野については恵まれてきた。トランプ政権も共和党であり、科学の基礎研究に資金を提供する可能性はある。科学は経済に好影響をもたらすという見方を、トランプ政権がしてくれれば良いのだが。

シャルパンティエ氏 私も、基礎研究に力を入れる方向に進むことを希望する。米政権の方針は、世界中の研究者に影響を与える。現在、短期的な利益に結びつかない基礎研究は資金が付きにくい。クリスパー・キャス9は、基礎科学から技術が大いに発展する可能性を秘めている。技術革新の根底には基礎科学があるということをトランプ政権にも認識していただきたい。

日刊工業新聞2017年2月
小川淳
小川淳 Ogawa Atsushi 編集局第二産業部 編集委員
とるかとらないか、ではなくいつとるのかと言われた「ゲノム編集」が2020年のノーベル化学賞の受賞テーマになりました。2012年の発表から10年足らずでの受賞決定に、いかに画期的な技術か分かります。現在はクリスパーキャス9は一般的なツールとして広がっています。新型コロナの治療薬開発にも貢献しており、今後どこまで私たちの生活を変えていくのか楽しみです。

特集・連載情報

ノーベル賞2020
ノーベル賞2020
2020年のノーベル賞科学3賞の特集です。過去の受賞者の紹介もしています。

編集部のおすすめ