地球温暖化で急激に減る北極海の海氷量、流れ込む「冷水」の起源を突き止めた!
東京大学と北海道大学、海洋研究開発機構の研究チームは、北極海に流れ込む冷水の存在を示し、その起源を突き止めた。海洋調査によりシベリア沿岸で冷水湧昇帯を発見し、発生の物理的メカニズムを解明した。冷水の湧昇は北極海の海氷を維持する役割があり、冷水源流域の気候変動が海氷量に影響する可能性がある。
北極海の海氷量は地球温暖化の影響で急激に減少している。だが、北極海や周辺海域での熱輸送とその収支のデータは乏しく、海氷変化の高精度な予測は難しい。
研究チームは、観測知見の少ないベーリング海北西海域で海洋調査を実施。シベリアとアラスカの間にあるアナディル海峡周辺に、約0―2度Cの冷たい海水が海面に現れる冷水湧昇帯を発見した。
海水の流速や水温、海水中の混合の強さなどを計測した結果、冷水湧昇の発生時、海底付近で強い乱流混合の兆候が観測された。
この混合は、海峡を通過する流れが海底付近に摩擦を生じる薄い層を形成し、これにより流速の急激な勾配ができることで起こる。
こうした境界層が発達する環境では底層の流れは上層より岸向きに偏るため、シベリア沿岸に底層水が集まり、行き場をなくした水が海面に湧き上がると考えられる。
この冷たい湧昇水が海峡を北上し、北極海の低水温と海氷を維持していることが分かった。
日刊工業新聞2020年9月18日