米国で進む“ファーウェイ抜き”、日本への影響は?
米トランプ政権は、中国通信機器最大手の華為技術(ファーウェイ)に対する半導体の輸出規制を強化した。米国の技術を使って各国・地域で製造する半導体について、同社への供給を禁止する内容。同社は4―6月のスマートフォン出荷台数が世界首位、通信基地局も最大手。今回の規制で生産に大きなダメージが及ぶのは必至だ。日本企業から年1兆円以上の部品を調達しており、電子デバイスメーカーへの影響が懸念される。
米中対立が激化する中、米国商務省は安全保障を理由にファーウェイへの規制を強化した。トランプ政権は通信機器を通じた情報流出を警戒。第5世代通信(5G)をはじめ、ハイテク分野での米中の覇権争いが背景だ。
日本の電機大手や電子部品大手はいずれも個別企業との取引状況を明らかにしていないが、供給部品によって状況は異なるようだ。
相補型金属酸化膜半導体(CMOS)イメージセンサー世界最大手のソニーはすでに影響が顕在化。ファーウェイが制裁発動前に先手を打って在庫を積み増した反動減でカメラ部品が低迷。コロナ禍でのスマホ販売減速と相まって、逆風は強い。
NAND型フラッシュメモリー世界大手のキオクシア(旧東芝メモリ)も打撃を受けるが、年末発売のソニーなどの新型家庭用ゲーム機向け特需がファーウェイ・ショックを多少緩和してくれそう。
ジャパンディスプレイ(JDI)は、米アップル向けと比べてファーウェイとの液晶パネル取引は少量。ほかの中国系スマホメーカーからの引き合いが増え、「災い転じて福となす」を地で行く。
京セラはじめ、多くの電子部品メーカーがファーウェイに部品を供給している。村田製作所はコンデンサーや表面波フィルターなど、ロームはIC、TDKはセンサー、太陽誘電はコンデンサー、アルプスアルパインがアクチュエーター、ミネベアミツミはバックライトやコネクターなどを供給しているもよう。
全体的に日本の電子部品メーカーはファーウェイ以外との取引も多く、影響は限定的との声が多い。ファーウェイがシェアを落としても、全体需要は変わらずに競合する取引先のシェアが上がるだけなら問題はない、との論法だ。今回の規制は半導体関連が中心。コンデンサーなど、日本が先頭となり、開発してきた技術については半導体ほどの影響は無いとの見立ても業界関係者からは聞かれる。
通信基地局関連への影響はどうか。
住友電気工業は5G対応携帯基地局向けの窒化ガリウム(GaN)デバイスをファーウェイなど、複数の通信機器メーカーに供給しているもよう。同デバイスは世界で需要が増え、国内工場で増産投資を継続。21年には米国生産も始める計画。住友電工は「一般的に製品供給先は1社に偏らないよう分散している」とし、現時点の影響は限定的のようだ。通信事業者がファーウェイ製品の代わりに、NEC、富士通、スウェーデンのエリクソン、フィンランドのノキアといった通信機器メーカー品をスムーズに採用すれば、同デバイス販売が大きく減る事はないとの見方もある。ただ「需要への影響は不透明なので、動向を注視する」(住友電工)としている。