NTTと共同戦線、NECの海外事業は大化けするか
NECは海外事業で反転攻勢に打って出る。海外商戦で苦戦していたディスプレー事業はシャープへの売却を決め、7月には連結から外れる。海外主体のエネルギー事業も価格競争の波にのまれ、中核の電力会社向け大型蓄電池からの段階的な撤退を決断した。一方で、NTTとの資本・業務提携が決まり、第5世代通信(5G)の無線基地局の世界展開への道が開けた。NECの海外事業は大化けする可能性が見えてきた。(取材=編集委員・斉藤実)
NTTとの提携は、5G設備のオープン化を目指す「O―RAN」や、次世代光通信基盤の構想「IOWN」の実現に共同戦線で挑むのが狙い。新野隆社長は2日に開いたウェブ会見で中国・華為技術(ファーウェイ)などの競合先について「垂直統合では勝ち目はない。我々は(O―RANなどの)オープンな世界で水平分業で戦う。戦い方を変える。ゲームチェンジだ」とNTTとの提携の意義を改めて強調した。
一方で5Gの世界展開に向けて、NECが手を組む韓国サムスン電子や楽天との提携内容についても言及。「サムスンとは共同開発ではなく、互いの製品を組み合わせて販売する。楽天とは我々の技術を楽天が提供する完全仮想化技術に盛り込んで展開する。NTTとは共同開発から着手し、成果を共同で世界展開する」と、それぞれの相違点を指摘した。
これを踏まえ「NTTとの提携が一番強い」と強調。「DSP(デジタル信号処理プロセッサー)などの共同開発の成果をまずNTTに使ってもらい、その実績を踏まえて、超巨大なオペレーターであるNTTとともに海外に出て行く。こうした取り組みはこれまでにない」と述べた。
5G関連事業の海外展開はNECの成長戦略を左右する重大テーマ。NECの海外売上高は19年度が連結ベースで全社比24・3%の7520億円。このうち本体の海外事業を束ねる「グローバル・ビジネスユニット(BU)」は、売上高が4938億円。営業損益は期初計画に届かず、38億円の赤字が残った。
20年度はグローバルBUの黒字転換が必達。5G関連の海外展開が収益を押し上げるにはまだ時間がかかるが、軌道に乗れば大きく飛躍する。21年度以降の新中計経営計画へのバトンタッチを前に、新野体制での果敢なアタックが注目される。