健康診断⇒オンライン診療⇒外来へ繋げる!手軽さで訴求
ビッグデータで差別化
メディカル・データ・ビジョンは10月からオンライン診療分野に参入する。同社が保有する医療ビッグデータ(大量データ)を生かし、医師の診断を補助する仕組みなどで他社と差別化を図る。健康診断を診療につなげ、患者が健康状態を正確に把握できる仕組みを作る。同社の岩崎博之社長に具体的な構想を聞いた。
―オンライン診療分野に参入する理由は。
「もともと当社では健康診断を中心としたオンライン診療システムを考えていたが、これまでは規制の関係で実現できなかった。しかし新型コロナウイルスの感染拡大がきっかけで規制緩和が進み、実現が見えてきた」
―どのようなサービスを提供しますか。
「医師が患者をビデオ通話で診察し、オンラインで医療費の支払いや処方箋の送付が完結するサービスを始める。他社との違いは3点。まず、当社の医療ITサービスを導入済みの病院や健診センターに加え、医療機関以外でも健診ができる場所を今年中に整備する。健診を診察の起点にするためだ」
「また、これまで収集した約3000万人分の医療データや約80万人分の電子カルテデータなどを人工知能(AI)で解析し、診察に役立てる。患者が健康状態や生活習慣を回答すると、可能性のある疾病をリスト化し、医師に示すオンライン問診システムを提供する」
―三つ目の差別化策は。
「セカンドオピニオンを求められるよう医師と患者をつなぐ機能も提供する。複数の医師を登録し患者に紹介する『ドクターバンク』を作るつもりだ。患者が自分の診療情報を確認できる『カルテコ』という既存サービスをオンライン診療の窓口にする。スマートフォン向けアプリケーション(応用ソフト)で9月に提供する」
―収益化の仕組み(ビジネスモデル)を教えて下さい。
「医療機関はドクターバンクの登録料を月額で支払う。患者にはオンラインの通信費を負担してもらう」
―オンライン診療は対面より診療報酬が低額です。医療機関が導入するメリットは。
「診療報酬の低さが問題になるのはオンラインで診察が完結した場合。外来につなげられれば病院にとって収入になる。健診を診察の起点にするのはそのためだ」
「健診の結果が悪かった場合に医療機関を受診する人はどれだけいるだろうか。手間を敬遠して行かない場合が多いはずだ。しかし、健診後すぐにオンライン診療につなげられるサービスがあれば受診しやすいだろう。これまで来なかった潜在的な患者を医療機関は取り込める」
―今後の目標は。
「2025年までに1000万人の電子カルテデータを蓄積し、ビッグデータとして活用したい。また、救急や重症患者に対応する病院約800施設、なかでも複数の市町村をカバーする病院約300施設へ導入を目指す」
【記者の目/医療界での活用進む】
健診とオンライン診療の連携を意図したシステムは業界でも珍しく、医療ビッグデータの活用とともに他社との差別化が期待できる。日本医師会(日医)からはオンライン診療の規制緩和に慎重な声が上がるものの、政府は新型コロナ対応を機に普及を進める。医療界でのオンライン診療活用は今後も進みそうだ。(森下晃行)