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一貫して架空取引の被害者を主張も、リース会社の協力得られず倒産した厨房卸

AIKジャパンコーポレーション、支援元も倒産

電気製品および厨房(ちゅうぼう)設備・什器(じゅうき)などの卸売りを手がけていたAIKジャパンコーポレーションは、2015年5月に設立。厨房設備・什器などの販売で着実に顧客基盤を拡大し、営業開始後、実質的な1期目の決算となった17年8月期には年売上高約13億2000万円を計上していた。この間、同年2月頃に知り合いの社長から新規事業として家庭用・業務用電気製品卸事業の話を持ち掛けられた。こうした取引の増加により、19年8月期には年売上高約116億7500万円にまで急拡大していた。

しかし、同年12月に得意先からの入金が行われなかったことに端を発し、一連の取引の大部分が架空取引であったことが発覚。その後、取引を主導した企業と取引を持ち掛けてきた社長の企業も事務所を閉鎖し、連絡が全く取れない状況となってしまった。一連の架空取引により大幅な損失が発生。金融機関からの借入金の返済負担が重く、急速に資金繰りが悪化。このため金融機関に事情を説明し長期的な弁済計画の理解を得たい旨を伝えていた。

しかし、新型コロナウイルスの影響で、支援元となるはずだった関係会社の虎杖東京が6月30日に東京地裁へ民事再生法の適用を申請。これに伴い、弁済計画の実現が困難になったことに加え、架空取引の発覚により厨房設備・什器販売において、リース会社の協力が得られず、事業継続を断念し、7月27日に東京地裁へ自己破産を申請した。

同社の代表は当初より一貫して、架空取引において被害者の立場を主張してきた。しかし、架空取引を行ってきた事実、そのことによる信用失墜の影響は大きく、信頼を回復できなかった金融機関が複数あったほか、厨房設備・什器販売で重要な取引先であるリース会社の協力が最終的に得られなくなった。事情はともあれ、架空取引に加わることの代償がいかに大きいかを考えさせられる倒産となったのでないだろうか。

(文=帝国データバンク情報部)
日刊工業新聞2020年9月8日

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