サイバーダイン・THK・富士ソフト...感染症対策に都内ホテルでロボットの大規模実証
宿泊施設の現場にスタッフの姿がほとんど見当たらない―。そんな未来を予感させる東京都の実証実験が始まった。都内のビジネスホテルの客室や廊下、ロビーで清掃、検温、自動搬送など九つのロボットを試す。新型コロナウイルス感染症の流行下での非対面、非接触の業務運営の知見を積む狙い。「ウィズ・コロナ」時代の新たなスタンダードを確立する一歩にもなりそうだ。
「検温結果は正常でした。お通りください」。THKの検温ロボット「SEED―Noid」の声が「ホテルルートインGrand東京浅草橋」(東京都台東区)のロビーにこだまする。ロボの前に立つと人を検知し体温を自動測定。37度5分未満だと、ロボの伸ばした腕が下がり通行が可能になる。
27、28日に東京都が新型コロナの軽症者を受け入れる宿泊施設を想定して、実施する実証実験の一コマだ。東京都が運営する実際の宿泊療養施設と同じような構造を持つホテルでロボを利用して、スタッフの業務負担や感染リスクの軽減効果を測る。
客室のあるフロアでは、黙々と消毒作業するロボが目についた。サイバーダインの「MB―CL02」だ。消毒液を散布したり、床面に紫外線を照射したりして走行する。担当者は「(除菌消毒作業ロボは)空港やオフィスからの引き合いが強い。今後は宿泊施設でも利用が進めば」と語る。
客室内に目立つのはシャープマーケティングジャパンの「ロボホン」や富士ソフトの「PALRO(パルロ)」などコミュニケーションロボットだ。例えば、「歯ブラシを届けて」と室内で話しかけると、スタッフに通知され、自動搬送ロボが部屋の前まで届けてくれる。
ロボの導入は少子高齢化が進む日本では喫緊の課題だ。問題は導入の速度だが、新型コロナ禍により「非対面」「非接触」がキーワードになる今、加速する可能性が高い。東京都の担当者は「応用可能な発展的な実証実験を目指している」と期待をにじませた。