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レントゲン車派遣会社、自前の検診サービスへと焦った倒産劇

青葉レントゲン、買収でトラブル発生
レントゲン車派遣会社、自前の検診サービスへと焦った倒産劇

健康診断時のX線撮影を主力に手がけていたが…(写真はイメージ)

X線を主体とした健康診断サービスを手がけていた青葉レントゲンが、6月24日に破産手続き開始決定を受けた。同社は1956年8月に設立。業歴60年を超える老舗業者として、健診受託機関や医療法人を介し、元請け先にレントゲン車を派遣。健康診断時のX線撮影を主力に手がけ、90年代には年売上高3億円規模を計上していた。

その後は同業他社との競合で売り上げが漸減傾向にあるなか、複数の得意先がX線撮影装置を導入したことで受注が減少。売り上げが落ち込む一方、医師や看護師への報酬の支払いが元請け先からの入金より早いため手元資金が減り、資金繰りが悪化。金融機関からの借り入れやファクタリングの利用でしのいでいた。

この間、自社で健診センターを設け、健康診断業務を自社で完結させることで事業拡大と利益確保を計画した。付き合いのあった医療法人に医師を紹介してもらったところ、この医師が医療法人を買収する予定だったため、同社も参画を決断。買収資金の一部を提供し、事務所も移転した。

しかし、買収相手との間でトラブルが発生し、クリニック開業計画は頓挫。裁判を提起したが解決には至らず、買収資金に加え、開業予定地の設備の修理費も負担していたことから、さらなる資金繰り悪化を招いていた。その後も退去時の原状回復費が工面できず、移転先から退去できずにいた。2019年7月にようやく退去できたが、その時には金融機関やリース会社への支払いが遅れ始め、同年12月には国税庁からの預金口座差し押さえもあり、事業停止に至った。

同業他社との競合に加え、受注減少から売り上げの落ち込みが続くなか、打開策として決断した事業拡大が、買収予定であった相手先とのトラブルからかなわなかったことが本件倒産の最大の要因と言える。買収頓挫後も事業継続に努めたが、復活までの体力はすでに残っていなかった。

(文=帝国データバンク情報部)
日刊工業新聞2020年8月4日

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