ウィズコロナの旅行トレンド、“ハブ&スポーク”型とは?
―6月から近畿日本ツーリスト店舗の営業を再開しました。旅行需要の回復状況は。
「意外と消費者マインドは厳しい。関西と中部に比べて、首都圏は戻りが遅い。(北海道の)“どうみん割”など地方自治体独自の割引への反応は良く、旅行需要はある。回復(カーブ)はV字とはいかず、L字とU字の間になりそうだ」
―新型コロナウイルスと共生する“ウィズコロナ”の旅行トレンドを、どう見ますか。
「安全、近場、屋外の“安・近・外”だ。関西では伊勢志摩や南紀。近場の海へのニーズが強い。キャンプ場やグランピング施設の人気が高い。沖縄への問い合わせは多いが、(遠隔地への旅行の)本格化は夏休み以降になるだろう。(旅先でも仕事をして長期に滞在する)ワーケーションの時代が来る。在宅勤務の延長線上で普及するのではないか。積極的に展開したい」
―旅の行動自体は、どう変わりますか。
「これまでの、ルートをたどっていく周遊型旅行から(1カ所の宿泊拠点から周辺観光地に出かける)“ハブ&スポーク”型になるだろう。長期滞在化して移動も少なくなる。地域のDMO(観光地経営組織)などとハブやスポークにおける着地型コンテンツの開発に取り組んでいく」
―クラブツーリズムは定員を減らしてツアーを催行しています。
「バスツアーは1台19人にしている。利用客の年齢層が高く(需要が)動き始めるのは遅くなるのではないか。(コロナ前は)海外も良かったがブレーキになった。元に戻るまで最短でも1年はかかるだろう」
―旅行にもデジタル化の波が押し寄せていますが、対応策は。
「移動はデジタルで手配するようになるだろう。MaaS(統合型移動サービス)も、その延長線上。旅行業が、生き残るには“旅の専門家”になることだ。我々の価値は人が提供するサービスにある。旅行もホテルのように星の数(グレード)に応じて、おもてなしの度合いが変わるだろう。毎回同じグレードの旅行でなく、目的や同行者によって、星の数を選ぶようになり、質と対価は確実にリンクする。提供する側は、期待レベルのちょっと上をサービスしていく」
【記者の目/多額キャンセルは重荷に】
旅行会社は事業特性上、取扱額が極めて大きくなる。KNT―CTホールディングス(HD)は、新型コロナウイルスの影響で単月のキャンセルが最大500億円出た。通期業績の利益予想もシナリオ次第で「上下差200億円」(米田昭正社長)と読めない状況だ。300億円の融資枠を確保するも、多額のキャンセルが発生する事態だけは、回避したいところだ。(小林広幸)