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宿泊施設再開、ビュッフェスタイルにも変化…夏に挽回なるか?

休暇村協会理事長・河本利夫氏インタビュー

新型コロナウイルス感染拡大防止を狙った“移動の自粛”によって、全国の宿泊施設は休業や低稼働の打撃を受けた。19日には県をまたぐ移動の自粛が全面解除となる予定で、観光の再開が期待される。宿泊業者は感染防止ガイドラインに沿って、客の受け入れ準備を進めており、反転攻勢に気勢を上げる。国立公園など37カ所で宿泊施設「休暇村」を展開する休暇村協会の河本利夫理事長に、コロナ影響の実際と観光再開への期待を聞いた。

―旅行控えが始まった2月以降の稼働は、いかがでしたか。
「宿泊業の役割、従業員の雇用と事業継続を念頭に休業せず、なるべく営業を続けようと努めた。自治体からの休業要請もあって5月の大型連休期間は20カ所で営業を自粛したが5月16日以降、すべての施設で再開している。稼働率は2月中旬から落ち込み、4月が10%、5月が14%と大変厳しい状況が続く」

―自治体から要請された内容は。
「(ある県では)他県からの宿泊客を受け入れないようにという要請があった。国立公園の公共駐車場は他県ナンバーの来訪を防ぐため、閉鎖される場所もあった。今夏はすでに、気仙沼大島(宮城県)や館山(千葉県)などで海水浴場の自粛要請もでている」

―感染防止対策は。
「(業界のガイドラインに対応し)衛生管理や“3密”対策に取り組んでいる。7月からは、トングを使わず小鉢に取り分けた形でビュッフェスタイルも再開する。提供に手間はかかるが、食と自然を楽しんでもらうのがコンセプトであり、期待に応えたい」

―足元で近場の観光需要はいかがですか。
「ほとんどの施設で県内客の利用が増えている。もともと“地域重視の営業”を方針に掲げており、地元の教育利用などもあった」

―仕事をしながら、家族とともに旅行する“ワーケーション”の需要はいかがですか。
「キャンプ場でのテレワークが話題になるなど、力を入れていきたい。通信環境を充実させることや、専用部屋や備品を用意することも検討している。旅行会社と組んで長期滞在プランも打ち出したい。雄大な自然の下、3密回避をイメージできる施設にしていく」

―旅行需要喚起施策“GoToトラベル”への準備と期待は。
「(本格回復に向けて)サービスレベル、接客サービスを磨き、口コミ評価を上げようと取り組んでいる。過去の“ふっこう割”は短期集中だった。今回は長期に(効果が)続くようにしてほしい」

【記者の目/適正料金提供に知恵絞る】
観光産業の裾野は広く、新型コロナの影響は甚大だ。ある休暇村では、地元食材を仕入れていた商店が倒産した例もあったという。観光の再開後も厳しい環境は続きそうだ。収容人数を減らせば、価格を上げないと収支は均衡しない。「適正な料金」(河本理事長)でサービスを提供し続けるため、現場は知恵を絞る。(小林広幸)

日刊工業新聞2020年6月18日

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